財務担当に聞く!「見えない未来」を数字で読む力—投資、経営判断、キャリア選びまで

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こんにちは!オペレーションチームの安達です。
突然ですが、皆さんは自社の「貸借対照表」や「損益計算書」がどんなものか、説明できますか?
「正直、見たこともない…」「経理や財務の人のための資料でしょ?」
そう思った方も多いかもしれません。何を隠そう、私もその一人でした。

しかし、そこには会社の「体力」や「稼ぐ力」、そして「将来性」といった、重要な情報がぎっしりと詰まっています。
そしてそれは、会社の未来だけでなく、社員である私たちのキャリアや、個人の資産形成にも深く関わってくるのです。

会社の数字を読み解く力は、まさに変化の激しい時代を生き抜くための「武器」になるのではないか。
そんな仮説を検証すべく、今回は我らが誇る財務のエキスパート、鳥飼さんに真正面から質問をぶつけてきました!
株価の向こう側に見える企業の本当の姿とは?
財務のプロは、会社のどこを見て「危機」を察知するのか?

ちょっと難しいけれど、知れば必ず役に立つ「財務の視点」。
業務では関わりがない方も、今日は少しだけその面白さに触れてみませんか?

 

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執筆者:安達 梨花 新卒で総合住宅建設資材の流通企業に入社し、建設資材の販売営業に従事。その後、IT人材サービス・DX支援企業へ転職し、人事職として採用選考業務のスケジュール管理やシステム運用を担当。業務フローの改善にも取り組む。
 2025年、株式会社トライエッジに参画し、CRMの運用支援を担当するほか、採用業務のサポートも行う。 

 

【鳥飼】プロフィール写真-1

 

 
 
 
財務担当:鳥飼 良太 医療機器企業で公開準備等に従事後、外資系IT企業のFP&Aとして数値計画作成等を担当。その後、SaaSベンチャー企業COO、IT金融グループの新規事業起ち上げなどを経て、トライエッジ、アメイジング・テクノロジーに参画。

 

株式投資で見るべきポイントとは?

株式投資、投資信託、iDeCo、FX・・・
資産運用には様々な方法がありますが、一番イメージがしやすいのは株式投資ではないでしょうか。
「株を買うなら、単純に株価が低い時に買えば良いのでしょうか?」
 そんな質問に対し、鳥飼さんは次のように答えてくれました。
  
 「大事なのは、“なぜ今その価格なのか”と“これからどうなるのか”の2点を見ることです。」

具体的には、以下の3つを挙げています。
・マーケット全体の成長と外部環境の動向
・個社の事業戦略と財務体質
・株価の長期チャートと、現在の株価からの将来レンジがどうなりそうか

特に印象的だったのが、2021年の航空業界の例。
コロナ禍で航空各社の株価は大きく下がりましたが、長期的に見れば一時的な現象と捉えることもできます。
外出規制など特殊な外部環境の変化もあり株価は下がりましたが、航空会社の提供しているサービスが毀損したわけではありません。

よって、旅行客やビジネス客が戻れば、コロナ禍以前の需要水準までは戻らなくても一定水準に戻る可能性は高いと判断できます。
その際にコロナ以前の株価と比較して著しく下がっていれば、割安と判断することもできます。


それに加えて、特殊環境下を耐えられる資金体力があるか、どの程度の期間であれば大丈夫かなど財務面での確認は必要ですが、過去から将来の予測を含めた流れで捉えることが重要です。

「あのタイミングで、業界全体や事業の復元力、財務体質を見ていれば、いずれ持ち直す—“今は買い”と判断できたと思います。ただ“安い”だけではなく、その企業が将来的にどういう流れになりそうかを見極める力が必要です。」

つまり、数字は“点”ではなく“線”で見ること。
その背後にあるストーリーを読めるかどうかが、投資判断の肝なのです。
株価と価値は別物だ—鳥飼さんの投資スタンスは、まさに外部環境やマーケット 、財務の視点を活かした「質」にフォーカスしたものだと感じました。

続いて話題にあがったのは、未公開株/非上場株(ベンチャー企業など)への投資。
公開株と比べて判断がしづらいと話すと、少し違った観点から回答してくれました。

 「正直、数字だけでは判断できません。『この経営者、経営陣の本気度』を見極められます。
私はかつて資金調達する側の立場でしたが、資金提供者からは、経営者、経営陣の人柄や理念、そして人として信頼できるかどうかを見られていると感じました。数字だけでは測れない部分が、企業の成長に直結する。」


ベンチャー企業は数字の実績が乏しい分、伸びしろの見極めは困難です。
 だからこそ、経営者、経営陣のビジョン、覚悟、人間性が見られていると感じました。

財務が見る「数字の先にある動き」

財務という立場で、経営層に対して「ここは危険だ」「ここは勝負どころ」と伝える場面についても伺いました。
企業の成長や衰退の兆しを見極める際、鳥飼さんが注目しているのは「需要=見込み顧客(パイプライン)の時系列の動き」です。

見込み顧客の増減は、売上の先行指標になります。
見込み顧客が急増しているときはスケールする需要を掴んでいる可能性があります。この需要を具体的な案件にしていくことが必要で、これが萎みだすとそれは危険信号。」

財務担当が冷静に状況を読むためには、「数字に基づく仮説」が欠かせません。
 時系列での数字推移と、そこから導き出される仮説。それが意思決定を支える武器になります。

「“直近数ヶ月や半年”でどう変化したか”“前年と比べてどうか”など、時系列で話すことで説得力が出るんです。」

“兆し”を、経営層にどれだけわかりやすく伝えられるかが財務の腕の見せ所。
数字を「伝わる言葉」に変える力が求められます。

「これまでのキャリアで、財務の経験が役立ったと感じた場面は?」と聞くと、鳥飼さんは前職のIBMでの経験を語ってくれました。

「どんな意見にも“根拠”が求められた環境でした。曖昧な話は一切通用しなかった。
一次情報をベースに、自分の意見を論理的に構築する。
その習慣が、今でも自分のベースになっています。
32歳で“修行のつもり”で入社しましたが、あの時期が今の自分を作ってくれたと思っています。つらかったけど(笑)」

厳しい環境ではあったけれど、「修行だと思ってやりきった」と語る姿からは、数字に真摯に向き合ってきた覚悟が伝わってきました。

まとめ:数字と人を両輪で見る、それが「財務の目」

最後に、「鳥飼さんはこれまでの転職時、どんな基準で企業を選んできましたか?」と聞いてみました。

「もちろん、企業の成長性や条件も見ますが、一番は人間関係。面接での雰囲気、社内の空気感、そういった“感じたもの”を信じて選んできました。
条件が少し悪くても、直感的にやりたい方を選ぶ。結果的に後悔したことは一度もありません。」

“数字”を誰よりも重視する財務の人が、“直感”を信じる—そのバランス感覚が、鳥飼さんらしさを象徴しているように感じました。

財務の仕事は、単に数字を読み帳簿を締めるだけではありません。
数字の「意味」を読み、「兆し」を伝え、「未来」を予測し、時には「直感」とすり合わせながら意思決定をサポートする仕事です。

鳥飼さんの話を通じて感じたのは、「数字」と「人」の両方を大切にするバランス感覚の重要性でした。
これからの時代、財務に限らずあらゆるビジネスパーソンにとって、この感覚は武器になるのではないでしょうか?

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