法人営業のKPI設定:KGIから逆算する手順と、定義を揃える理由
法人営業のKPIは、KGIをロジックツリーで因数分解して設定します。新規顧客100社をKGIに置き、アポ率50%・面談率80%・提案率40%・成約率30%で逆算すると、必要な問い合わせは2,083件、毎月173.5件、1営業日あたり9件です。各項目の定義づけと、見直しの方法まで解説します。
法人営業のKPIは、KGIをロジックツリーで因数分解して設定します。思いついた指標を並べるのではなく、KGIから逆算します。
逆算すると必要な活動量が具体的な数字になります。 新規顧客100社をKGIに置き、アポ率50%・面談率80%・提案率40%・成約率30%で計算すると、必要な問い合わせ数は2,083件、1営業日あたり9件です。
この記事では、KGIとKPIの関係、ロジックツリーでの分解の手順、逆算の計算、そして最も抜けやすい「定義を揃える」作業について説明します。
KGIとKPIはどういう関係にあるのか
KGI(Key Goal Indicator)とKPI(key Performance Indicator)はセットで使われる用語で、それぞれ次を表します。
KGI=経営目標達成指標
KPI=重要業績評価指標
KGIは企業(事業)の最終目標を達成するために必要な指標です。法人営業であれば、
年間売上1億円
などがKGIとして設定されます。ただし、KGIは最終目標を達成させるために必要な指標であり、必ずしも売上になるとは限りません。 企業や事業によっては利益額になるかもしれませんし、顧客数になることもあります。その企業の事業モデルや目指すべき方向によって、設定すべきKGIは異なります。
一方、KPIは重要業績評価指標です。設定したKGIを達成するために、さらにブレイクダウンした指標がKPIとして設定されます。図に示すとKGIとKPIは以下のような関係性になります。

KPIはそれを達成することによってKGIが達成する仕組みとなっており、この関係性が崩れてしまうと、KGIやKPIを設定する意味がなくなってしまいます。
KPIロジックツリーでどう分解するのか
KGI・KPIを設定するために活用できるのがKPIロジックツリーです。KGIを起点として、そのKGIを構成する要素を因数分解のようにしていくことで、どういったKPIを設定していくべきかを考えるきっかけになるものです。
例として、あるソフトウェアを販売する法人営業を考えます。ここではKGIを100社の新規顧客として設定します。このKGIを構成する要素は何になるでしょうか。
100社の新規顧客=提案数×成約率
と設定できます。次に、この分解した要素をさらに分解します。
提案数=顧客面談数×提案率
と分解できます。このように分解していくと以下のようになります。

このとき、各項目で置かれた
- 提案数
- 面談数
- アポ数
- 問い合わせ数
をKPIとして設定できます。次のステージに行く確率がある程度データ化されていれば、KGIを100社と置いたときに、そこから逆算してどのくらいの提案が必要か、どのくらいの面談が必要か、どのくらいのアポイントが必要か、そのためにどのくらいの問い合わせ数が必要かが見えてきます。
以下の図のように整理することもできます。上のほうのKPIから数が多いKPIとなっています。

こうして設定したKPIを元に営業活動を行い、営業部全体、そして各営業ごとにどのように数値が構成されているかを確認することで、最初に設定したKGIを達成するためにどのくらいの営業活動を行えばよいかが分かるようになります。
具体的にどう逆算するのか
新規顧客を100社獲得するというKGIを設定した場合、各KPIはどうなるのか。各段階への遷移を次のように設定して計算します。
- アポ率:50%
- 面談率:80%
- 提案率:40%
- 成約率:30%

このように設定した場合、最初のKPIである問い合わせ数は2,083件必要ということになります。
KGIをどのくらいの期間で達成したいのかにもよりますが、仮に1年=12ヶ月で考えた場合、毎月必要な問い合わせ数は173.5件です。
問い合わせ数が月間173.5件必要ということであれば、20営業日換算で8.67件、すなわち9件ほど必要な計算になります。これが現実的な数値かどうかは、各企業の状況によります。
この計算の価値は、現実的でないと分かった時点にあります。 1日9件の問い合わせが取れないと分かれば、遷移率のどこを上げるか、KGIを見直すか、獲得チャネルを増やすかという次の議論に進めます。獲得側の手法はリードジェネレーションとは?獲得手法の一覧とチャネル別の効果測定で扱っています。
なぜ定義を揃える必要があるのか
KPIを設定するにあたって最も気をつけなければならないのが、**各KGI・KPIとして設定した項目の「定義は何か」**ということです。
問い合わせ数・アポ数・面談数などは分かりやすい項目に思えるかもしれませんが、きちんと定義付けをする必要があります。KPIとして設定した項目がどういった状態を表すのかが営業ごとに異なってしまうと、KPIを設定する意味がかなり薄れます。 そして営業ごとに各KPIの遷移率に差が生じてしまい、同じ土俵で議論することができなくなります。
たとえばKGIとして設定されている新規顧客についてですが、
- 法人としての新規顧客なのか
- 同一法人でも別部署ならば新規顧客なのか
- 過去取引があった顧客からの成約は新規顧客なのか
などが考えられます。さらに提案数についても、
- 提案書を提出した段階で提案とカウントするのか
- 具体的な金額を提出した場合に提案数とカウントするのか
- 見込み顧客へのヒアリングを行ったあと、その内容に応じた提案をしたことを提案数とするのか
など、さまざまな解釈ができてしまいます。
定義は文書にして、全員が同じ場所を見られる状態にしてください。 口頭の合意では、人が入れ替わった時点で崩れます。商談のステージの決め方はBtoBビジネスにおける商談ステージの重要性と決定方法、マーケティングと営業の間の線引きはMQL・SQLとは?リードの区分とその考え方で扱っています。
KPIはいつ見直すのか
一度設定したKPIはそれで終わりではありません。その数値の進捗状況や次のKPIへの遷移率を勘案して、変更や追加などのチューニングを常に行っていく必要があります。
見直しのきっかけになるのは次の2つです。
1. 遷移率が極端に低い箇所がある
上記の例で言えば、面談数から提案数への遷移率が極端に低い場合、おそらくその間に何かしらKPIとして設定すべき項目があると考えられます。
ITソリューションを扱っている企業の場合は、そのソフトウェアのデモンストレーションかもしれませんし、単純に見積書の提示数かもしれません。
2. 人によってばらつきが大きい
同じ工程なのに営業ごとの数字が大きく違う場合、定義が揃っていないか、間に必要な行動が抜けています。
どちらの場合も、成績をあげている営業の活動を深く観察することが大きなヒントになります。 成績をあげている営業は成果をあげるために、意図せずともさまざまな工夫を凝らしていることが多分にあります。その方法にどのような特徴があるのか、それを一般化するとどのようなKPIを設定するべきかを考えたうえで、新たなKPIを設定したり、現在設定しているKPIの見直しを行いましょう。
架電やメールで商談化まで進める工程の設計はインサイドセールスの記事で扱っています。
KPIの管理にCRM / SFAをどう使うか
KPI設定を行い、定期的に改善を行っていくには、CRM / SFAを活用するとより効率的に管理できます。 CRM / SFAはこうしたKPIの数値管理に長けた機能を多く備えています。
ただし、CRM / SFAを導入してもうまく使いこなせず、結果として使わなくなってしまうことも多々あります。定着の条件は、KPIとして設定した項目だけを入力対象にすることです。 集計に使わない項目を増やすと、入力そのものが止まります。
まとめ
法人営業のKPIは、KGIをロジックツリーで因数分解して設定します。新規顧客100社をKGIに置き、アポ率50%・面談率80%・提案率40%・成約率30%で逆算すると、必要な問い合わせ数は2,083件、1営業日あたり9件になります。
そして最も抜けやすいのが、各項目の定義を揃える作業です。定義が営業ごとに違うと、遷移率が比較できず、KPIを設定する意味が薄れます。
トライエッジでは、CRM / SFAの導入について、初期のKPI設計からどのように定着させていくべきかまでを支援しています。詳しくはCRM構築・運用をご覧ください。ご相談はお問い合わせから承ります。
FAQよくあるご質問
Q. KGIとKPIの違いは何ですか?
KGI(Key Goal Indicator)は経営目標達成指標で、企業や事業の最終目標を表します。法人営業であれば年間売上1億円などが該当し、事業モデルによっては利益額や顧客数になります。KPI(Key Performance Indicator)は重要業績評価指標で、KGIを達成するためにブレイクダウンした指標です。KPIを達成すればKGIが達成される関係になっていることが条件で、この関係が崩れると設定する意味がなくなります。
Q. KPIはどうやって設定しますか?
KPIロジックツリーを使います。KGIを起点に、それを構成する要素を因数分解していく方法です。たとえば新規顧客100社というKGIは、提案数×成約率に分解できます。さらに提案数は顧客面談数×提案率に分解できます。この作業を続けると、提案数・面談数・アポ数・問い合わせ数という4つの項目が現れ、これらをKPIとして設定できます。
Q. KGIから必要な活動量をどう逆算しますか?
各段階の遷移率を当てはめて計算します。KGIを新規顧客100社、アポ率50%、面談率80%、提案率40%、成約率30%と置いた場合、最初のKPIである問い合わせ数は2,083件必要になります。これを1年(12ヶ月)で達成するなら毎月173.5件、20営業日換算では1日あたり8.67件、つまり9件ほど必要という計算です。この数字が現実的かどうかは各社の状況によります。
Q. KPIの定義はなぜ揃える必要がありますか?
定義が営業ごとに異なると、遷移率に差が生じて同じ土俵で議論できなくなるためです。たとえば新規顧客ひとつ取っても、法人としての新規なのか、同一法人でも別部署なら新規なのか、過去取引があった顧客からの成約は新規なのかで数え方が変わります。提案数も、提案書を出した時点か、金額を提示した時点か、ヒアリング後に内容を提示した時点かで解釈が分かれます。
Q. KPIはいつ見直せばよいですか?
遷移率が極端に低い箇所や、人によってばらつきが大きい箇所が見つかったときです。たとえば面談数から提案数への遷移率が低い場合、その間に設定すべき項目が抜けている可能性があります。IT製品ならデモンストレーションの実施数、あるいは見積書の提示数かもしれません。どの項目を足すかは、成績をあげている営業の活動を観察して一般化すると見つかります。
出典・執筆:株式会社トライエッジ/伊能 藍子(CRM 導入・運用支援)。 2024年4月8日公開/2026年8月14日更新。