CRM導入のメリット④ 決めた改善策をCRMに組み込んで実行させる
改善策を会議で決めても、現場に浸透しないまま消えることがあります。CRMを使うと、決めたことを入力項目とワークフローに落とし込めるため、実行そのものが業務に組み込まれます。ヒアリング項目の追加、承認を挟む報告フロー、決算期に合わせたリマインドという3つの例で、Actionを続けさせる方法を整理します。
改善策は、決めることより続けることのほうが難しいという前提から始めます。会議で方針を決めても、日々の業務の中では優先度が下がり、数週間で元に戻ります。
CRMが効くのは、決めたことを入力項目とワークフローに落とし込めるためです。 実行するかどうかが個人の記憶ではなく、画面上の手順になります。
蓄積されたデータで振り返るところ(Check)だけでなく、次に何をするか(Action)を業務に組み込むところまでを1つのツールで扱えるのが、営業活動でCRMを使う理由です。
蓄積されたデータは何に使えるのか
CRMには、進行中の案件だけでなく、過去の売上・行動実績・失注理由といったデータが同じ場所に残ります。
ここから読み取れるのは次のようなことです。
- どの業種・規模の顧客で受注率が高いか
- 失注した商談は、どの段階で止まっているか
- 受注に至った商談は、平均して何回接触しているか
PlanとDoの結果を、蓄積されたデータでCheckする。この工程が成立するのは、記録が1か所に集まっている場合だけです。 個人のファイルに散らばっていると、集計するところから始まり、たいてい途中で止まります。
決めた改善策を、どう実行させるか
課題を見つけて改善策を決めても、それが現場に伝わって定着しなければ、決めた意味がありません。
やり方は単純で、決めたことを画面上の項目に変えます。
たとえば、改善策として「ヒアリング項目を1つ増やす」と決めたとします。この場合、CRMの商談画面にその項目を追加します。実際にヒアリングを行うとき、入力欄がそこにあるため、担当者ごとに発生していた聞き忘れが目に見える形で残ります。
さらに、その項目だけにフォーカスしたレポートを作れます。
- 100社中、何件で聞けたか
- 商談はしたが聞けていない企業はどこか
これをメンバー全員で共有できる状態にすると、実施率が人単位で見えます。できているつもりの状態が続くことがなくなり、できていない理由を個別に確認できます。
Actionで何をやるかが決まったら、その項目をCRMに組み込む。 これが実行力を上げる最も確実な方法です。
ワークフローで仕組みにする
新しいフローを決めても、各担当に習慣化されるまでには時間がかかります。ワークフロー機能を使うと、この習慣化を待たずに済みます。
条件を満たしたときに、通知・承認依頼・タスク作成を自動で実行する設定です。Zoho CRMを例に、2つの使い方を挙げます。
1. 報告フローに承認を挟む
営業活動では、メンバーによって報告があったりなかったり、報告の粒度が人によって違ったりします。 チームの人数が増えるほど、管理する側が進捗を把握するのが難しくなります。
そこで、一定の条件を満たす商談には上長の承認がないと先に進めない設定を入れておきます。条件は「主力商品で、かつ見積金額が100万円以上」といった形で指定します。
すると、該当する商談が登録された段階で、上長には自動的にその内容が共有されます。担当者は承認が通るまで次の段階へ進めないため、報告するかどうかを判断する余地がなくなります。
上長の側も、口頭・メール・電話とばらばらに届いていた報告がCRMに集まるため、確認漏れが減ります。
2. 時期に合わせてリマインドする
営業にはタイミングがあります。年間予算が決まる前か後か、決算期の前か後かで、同じ提案でも結果が変わります。
顧客の決算期をレコードに登録しておき、その一定期間前に担当者へ通知が飛ぶよう設定します。暑い時期・寒い時期に使うもの、特定の季節イベントで年間の販売量の大半が動くものなど、季節要因に左右される商材ほど効果が出ます。
担当者が個別にカレンダーで管理する必要がなくなり、時期を逃したことによる機会損失を防げます。
よくある失敗
1. 項目だけ増やして、見る人がいない
改善策のたびに項目を追加していくと、入力項目が増え続けます。追加するときは、その項目を使ったレポートを同時に用意し、いつ誰が見るかを決めてください。 見ない項目は入力されなくなり、次に追加する項目の入力率まで下げます。
2. ワークフローを厳しくしすぎる
承認を挟む条件を広く設定しすぎると、日常的な商談まで止まります。最初は金額や商品を絞り、対象を限定してください。 止まる案件が増えると、承認を回避する運用が現場で生まれます。
3. 効果を1ヶ月で判定する
改善策の効果は、商談の期間より短いサイクルでは測れません。検討期間が3ヶ月の商材で、1ヶ月後に受注数で判定すると、必ず効果なしという結論になります。 短期では実施率を、四半期では受注への影響を見るという形で、見る指標を分けてください。
まとめ
CRMが営業のPDCAで効くのは、CheckとActionの2か所です。とくに効くのは、実行が続かないというActionの側です。
決めた改善策は、入力項目とワークフローに変えてください。項目にすれば聞き忘れが見え、承認を挟めば報告が必ず行われます。決算期などタイミングが決まっているものは、通知として設定します。
そして、追加した項目は必ずレポートで実施率を見てください。見ない項目は入力されなくなります。
レポートの作り方は営業報告・共有の効率化、そもそものデータの集め方は顧客情報・商談情報の一元化、日々の入力を軽くする話は日報の提出と保管をなくすで扱っています。CRMとSFAの役割の違いはCRMとSFAの違いにまとめました。
トライエッジでは、各現場の課題をうかがったうえで、目標に合わせたCRMの使い方を設計しています。詳しくはCRM構築・運用をご覧ください。ご相談はお問い合わせから承ります。
FAQよくあるご質問
Q. CRMは営業のPDCAサイクルのどこで役に立ちますか?
CheckとActionの2か所です。Checkでは、過去の売上や行動実績が同じ場所に蓄積されているため、成功例と失敗例をデータから読み取れます。Actionでは、決めた改善策を入力項目やワークフローとして設定できるため、実行が個人の意識ではなく画面上の手順になります。とくに効くのは、実行が続かないというActionの側です。
Q. 改善策が現場に浸透しないのはなぜですか?
実行するかどうかが個人の記憶と意識に委ねられているためです。会議で決めても、日々の業務の中では優先度が下がります。対策は、決めたことを画面上の項目に変えることです。たとえばヒアリング項目を1つ増やすと決めたなら、CRMの商談画面にその項目を追加します。入力欄があれば、聞き忘れが目に見える形で残ります。
Q. ワークフロー機能では何ができますか?
条件を満たしたときに、自動で通知・承認依頼・タスク作成などを実行できます。たとえば見積金額が一定額を超える商談には上長の承認がないと次の段階へ進めない設定にすると、報告が必ず行われる状態になります。承認を通さないと先へ進めないため、報告するかどうかの判断そのものが不要になります。
Q. 改善策の実行状況はどう確認すればよいですか?
追加した項目だけを対象にしたレポートを作ってください。100社のうち何件で聞けたか、商談したが聞けなかったのはどの企業かが件数で分かります。実施率を人単位で見られるようにすると、できていない理由を個別に確認できます。感覚での確認では、できているつもりの状態が続きます。
Q. 季節や時期に左右される商材でもCRMは使えますか?
使えます。条件は2つで、接触すべき時期が決まっていることと、その日付を項目として登録できることです。顧客の決算期や商材が売れる時期をレコードに登録しておき、その時期の一定期間前に担当者へ通知が飛ぶよう設定します。年間予算が決まる前後、決算期の前後など、接触すべきタイミングが決まっている商材ほど効果が出ます。設定しておけば、担当者が個別にカレンダーで管理する必要がなくなります。
出典・執筆:株式会社トライエッジ/伊能 藍子(CRM 導入・運用支援)。 2024年4月8日公開/2026年8月14日更新。