人材派遣会社のマーケティングオートメーション(MA)活用例:シナリオ設計の考え方
人材派遣会社がMAを使う目的は、応募から再就業までの各段階での離脱を減らすことです。段階ごとに送る内容を変えるのが前提で、同じ内容を一斉配信すると登録解除につながります。エントリー後に登録会へ来ていないスタッフと、登録済みで現在就業していないスタッフの2つの設定例を、シナリオの形で紹介します。
人材派遣会社がMA(マーケティングオートメーション)を使う目的は、応募から再就業までの各段階での離脱を減らすことです。
前提になるのは、段階ごとに送る内容を変えることです。 エントリー後に登録会へ来ていない人と、過去に登録して現在働いていない人では状況が違います。同じ内容を一斉に送ると「自分のことではない」と受け取られ、登録解除につながります。
この記事では、シナリオ設計の考え方と、すぐに組める設定例を2つ紹介します。
人材派遣業界で何が課題になっているのか
日本における人材派遣業は1980年代にスタートしました。1980年当時、人材派遣自体は職業安定法で禁止されていましたが、必要な時期に必要な労働力とスキルを求める企業側と、スキルを生かしながら働く場所・時間・仕事を選びたい労働者側の双方のニーズに対応する制度として、1985年に派遣法が制定されました。
日本の労働市場は少子高齢化が進み、労働者人口が減少していくため、人材派遣業界では売り手優位の状況が続くと考えられます。
そこで課題になるのが、働ける優秀な人材・スタッフの派遣会社間での争奪戦です。 すでに多くの派遣会社が、就業スタッフの確保に多くの費用と労力をかけています。今後生き残るのは、優秀なスタッフを継続して確保できる派遣会社です。
MAは何を解決するのか
MAでは、氏名や連絡先が判明しているユーザーだけでなく、Webサイトを訪問した匿名のユーザーについてもサイト上の動きを可視化・数値化できます。
ユーザーに合ったメッセージを自動で送る、特定のページを見た訪問者にバナーで派遣登録を促す、特定の仕事を紹介するといった、状況に応じた情報提供が可能になります。
段階ごとに人が減っていく
人材派遣会社では、ユーザーが次の段階をたどります。
- 応募
- 派遣登録
- 仕事紹介
- 就業
- 契約終了
- 再就業
この過程でスタッフが少しずつ減っていくのが構造的な課題です。 応募した人の全員が登録会に来るわけではなく、登録した人の全員に仕事を紹介できるわけでもありません。
MAの役割は、各段階のユーザーに適したメッセージを送り、次の段階へ進む割合を高めることです。 どの段階の離脱を減らすかを決めれば、送るべき内容も決まります。

上の図のように、各段階の通過率が少しずつ上がると、最終的に就業に至る人数が変わります。まず自社の段階ごとの通過率を出し、どこが最も落ちているかを確認してください。 そこが最初に着手する場所になります。
広告との違い
MAは、広告と比べて各社で特色を出しやすく、企業からのメッセージを届けやすいという特徴があります。
求人広告では、広告費用を多く投じた企業が有利になりやすく、資本力のある大手企業が優位に立ちます。一方でMAは、企画力と自社の特徴の打ち出し方で差がつくため、中堅企業でも差別化しやすくなります。
段階ごとにメッセージをどう変えるか
MAを活用するには、事前にどのような状況の人にどのようなメッセージを打ち出すかを明確にしておく必要があります。
たとえば次の2つでは、状況が大きく異なります。
- エントリー後、登録会の申し込みをしていないスタッフ
- 過去に登録をして、現在働いていないスタッフ
この2つに同じメッセージを配信すると、「自分のことではないな」から「無駄な情報を提供してくる企業」と認識され、登録解除につながります。
送る相手の絞り込みと優先順位の考え方はスコアリングとは、育成施策全般の設計はリードナーチャリングとはで扱っています。
設定例1:エントリー後、登録会の申し込みをしていないスタッフ
Webなどでのエントリー後に連絡がつかず、登録に至る前にスタッフを逃してしまうケースへの対応です。
設定内容
- トリガー:エントリー後に登録していないスタッフで、最後にコミュニケーションを取ってから3日経過
- プロセス:メールを配信して登録を促す。メールが未開封の場合はメールまたはSMSでメッセージを再配信
- アクション:スタッフがメールを開封したら担当コーディネーターに通知。コーディネーターから個別に電話で連絡

開封を通知のきっかけにしている点が要点です。 開封した直後は関心が最も高い時間帯のため、その時点で人が動きます。
設定例2:過去に登録して、現在働いていないスタッフ
一度登録したものの現在就業していないスタッフは、どの人材派遣会社にも多くいます。定期的に情報を発信し、関心を持ったタイミングを捉えて連絡します。
設定内容
- トリガー:最終就業日から3ヶ月以上が経過し、現在仕事提示を受けていない状態になる
- プロセス:メールを配信して最新の仕事情報を届ける。メールが未開封の場合はSMSでメッセージを配信
- アクション:スタッフがメールを開封してWebサイトを閲覧し、3ページ以上移動した場合、担当コーディネーターに通知。コーディネーターから個別に電話で連絡

設定例1との違いは、通知のきっかけを「開封」ではなく「3ページ以上の閲覧」にしている点です。 就業中でない期間が長い相手ほど、開封だけでは関心の強さが分かりません。閲覧の深さまで見ることで、いま探している人を絞り込めます。
つまずきやすい点
1. 最初から全段階のシナリオを組もうとする
段階が6つあるため、すべてを同時に設計すると条件が重なり、同じ人に複数のメールが届きます。まず1つの段階だけを自動化し、動きを見てから広げてください。
2. トリガーの日数を根拠なく決める
3日、3ヶ月といった数字は、自社の実績から決めるものです。過去のデータで、連絡が取れなくなるまでの期間を確認してから設定してください。
3. 通知した後の動きを決めていない
コーディネーターに通知が飛んでも、誰がいつ電話するかを決めていなければ、通知が溜まるだけです。通知の宛先と、対応する時間帯まで決めてから運用を始めてください。
まとめ
人材派遣会社がMAを使う目的は、応募から再就業までの各段階での離脱を減らすことです。
設計の出発点は、自社の段階ごとの通過率を出し、最も落ちている場所を1つ決めることです。 そこから、その段階の人に何を送るかを組み立てます。
紹介した2つの設定例は、いずれもトリガー・プロセス・アクションの3段構えです。メールの配信で終わらせず、反応があった時点で人が動く形にすることが要点になります。
トライエッジはZoho社認定パートナーとして、Zohoのマーケティングオートメーション関連ツールの導入・運用支援・運用代行を行っています。製品名や提供内容は変更されることがあるため、対象ツールと料金はZoho公式サイトで最新を確認してください。
社内に運用担当者がいない場合も運用の代行が可能です。人材派遣業界に在籍経験のあるコンサルタントが複数在籍しており、業界に合わせたシナリオ設計から支援できます。支援内容はZoho 導入・運用支援、MAとCRMの連携はMAとCRMの連携をご覧ください。ご相談はお問い合わせから承ります。
FAQよくあるご質問
Q. 人材派遣業界でMAを使う目的は何ですか?
応募から再就業までの各段階での離脱を減らし、優秀な就業スタッフを確保することです。ユーザーは応募、派遣登録、仕事紹介、就業、契約終了、再就業という6つの段階をたどりますが、この過程でスタッフが減っていきます。まず自社の段階ごとの通過率を出し、最も落ちている段階を1つ決めて、そこに適したメッセージを送るところから始めます。
Q. なぜ段階ごとに内容を変える必要があるのですか?
同じ内容を送ると登録解除につながるためです。エントリー後に登録会へ申し込んでいないスタッフと、過去に登録して現在働いていないスタッフでは状況が大きく異なります。両者に同じメッセージを配信すると、自分のことではないと受け取られ、無駄な情報を送ってくる企業と認識されます。
Q. エントリー後に連絡がつかないスタッフには、何を送ればよいですか?
3段構えの設定例があります。トリガーはエントリー後に登録しておらず、最後に連絡を取ってから3日経過したこと。プロセスはメールで登録を促し、未開封の場合はメールまたはSMSで再配信すること。アクションはメールを開封した時点で担当コーディネーターに通知し、個別に電話で連絡することです。
Q. 過去に登録して働いていないスタッフには、何を送ればよいですか?
同じく3段構えです。トリガーは最終就業日から3ヶ月以上が経過し、現在仕事の提示を受けていない状態になったこと。プロセスは最新の仕事情報をメールで配信し、未開封の場合はSMSで配信すること。アクションはメール開封後にWebサイトで3ページ以上移動した時点で担当コーディネーターに通知し、電話で連絡することです。
Q. MAを使うには知識や経験が必要ですか?
ある程度は必要です。特にシナリオの設計は、業界や企業規模によって適切な形が変わります。まずは1つの場面、たとえばエントリー後に登録していないスタッフへの案内だけを自動化し、動きを見ながら広げるのが現実的です。最初から全段階を組もうとすると、条件の重なりや配信の重複が起きます。
出典・執筆:株式会社トライエッジ/森本 貴行(CRM/営業戦略)。 2024年4月8日公開/2026年8月15日更新。