2025年5月31日に行われた実業団囲碁大会。
参加者は200名を超え大盛況のうちに幕を閉じましたが、その成功の裏には、実は綿密なマーケティング戦略がありました。
「法人に限定」「参加企業名の公表」など、ビジネス交流の場として大会を盛り上げるために私たちが仕掛けた4つの戦略を全公開します。
イベント企画のヒントが満載です!
囲碁大会にマーケティング? 参加者200人超えを実現した、4つの戦略
こんにちは!トライエッジの中野です。
先日、私が実行副委員長として運営に関わらせていただいた「第3回 実業団囲碁大会」が、無事に終了しました。
(私自身、囲碁に関わったのはほんの3年ほど前なのですが、まさか自分が囲碁大会の運営に関わるとは・・・って感じです)
なんと今回の大会、参加チームは60チーム以上、総勢200名を超える方々にご参加いただけたんです。
会場は満員御礼。選手の皆さんの真剣な眼差し、そして交流の場で生まれる笑顔。運営メンバーとして、これ以上ない喜びを感じる瞬間でした。
実は私、今回の大会で実行副委員長かつ「マーケティング戦略」なるものを担当してます。 「え、囲碁の大会にマーケティング?」 「なんだか小難しそう…」 って思いますよね。
ただ、このマーケティングの考え方こそが、今回の集客や運営に驚くほど役に立ちました。
今日はその裏側で、私たちがどんなことを考えて、どんな仕掛けをしたのか。ちょっとだけ種明かしをさせてください。これから何かイベントを企画する人にも、きっと役立つヒントになると思います。

すべての始まりは「もったいない!」という想いから
そもそも、なぜ私が「マーケティング」なんて言い出したのか。 それは、従来の囲碁大会に対して「ただ集まって囲碁を打つだけじゃ、もったいない!」と強く感じていたからです。
参加してくださるのは、普段はそれぞれの会社でバリバリ働いている社会人の皆さん。せっかく「会社の看板」を背負って同じ場所に集まるのに、対局して「さようなら」では、あまりにもったいない。
「囲碁」という最高の共通言語があるのだから、会社の垣根を越えて新しい繋がりが生まれたら、もっと面白いことになるんじゃないか? 対局の緊張感も、その後の交流も、全部まとめて「楽しい!」と思えるような、そんな大会にしたい。
「ビジネス交流 × 囲碁」
このコンセプトが、私たちのすべての戦略の出発点になりました。
この大会を、単なる囲碁の腕前を競う場から、新たなビジネスチャンスや人のご縁が生まれる「プラットフォーム」へと進化させる。そのために、私たちが打った戦略が次の4つです。
戦略1:ターゲットの明確化 〜あえて「お断り」する勇気〜
マーケティングの基本は「誰に届けるか」を明確にすること。そこで私たちは、大会のコンセプトを尖らせるために、参加資格を 「法人の囲碁部(社名での参加が必須)」 に、グッと絞り込む決断をしました。
もちろん、「個人で参加したい」「友人同士のチームで出たい」という、ありがたいお問い合わせもたくさんいただきました。そのすべてにお断りの連絡を入れるのは、正直、本当に心苦しかったです…。
でも、「誰でもウェルカム」にすると、私たちが目指した「企業間交流」という軸がブレてしまいます。
ターゲットを法人に絞ったことで、いくつかの良い効果が生まれました。
- 大会のコンセプトが明確になった:「ここは、企業人が囲碁を通じて交流する場なんだ」というメッセージが、参加を検討している方々にもストレートに伝わりました。
- 参加者の意識が変わった:個人の名前ではなく「株式会社〇〇」として参加することで、選手の皆さんにも良い意味での責任感や、会社の代表としての意識が芽生えます。これが、大会全体の品格と一体感に繋がりました。
- 運営側のメリット:参加者がどういう人たちなのかが明確なので、大会のコンテンツや当日の運営も、その人たちが喜ぶであろう方向に最適化できました。
「選択と集中」とはよく言いますが、まさにその通り。すべての人を満足させることは難しい。だからこそ、「私たちは、こういう人たちに、最高の体験を届けたい」と覚悟を決めること。
それが、熱量の高いコミュニティを作る第一歩なんだと実感しました。
戦略2:参加予定企業の社名公表 〜BtoBマーケティング手法の応用〜
次に打った手は、これもちょっと変わっているかもしれません。 なんと、参加を申し込んでくれた企業名を、許諾を得た上で公式サイトにどんどん掲載していったんです。
これは、私が本業でやっているBtoB(法人向けビジネス)マーケティングの手法を応用したものです。 BtoBの世界では、「どの企業が、そのサービスを使っているか」という「導入事例」が、最強のコンテンツと言われます。安心感や信頼感に直結するからですね。
これを囲碁大会に応用してみたんです。
「どんな会社が参加するんだろう…?」 「ウチみたいな業界から参加しても浮かないかな…?」
参加を迷っている企業にとって、これはすごく重要な情報です。 公式サイトを見にきた人が、「お、あの有名な〇〇商事が参加するんだ!」「へぇ、IT系の企業も多いんだな」と分かれば、一気に参加へのハードルは下がります。
「あの会社が来るなら、ウチも出よう!」 この心理的な効果は、私たちの想像以上でした。次々と参加企業名が公開されるたびに、それが呼び水となって新しい申し込みが舞い込んでくる。まさに、嬉しい連鎖反応です。
それに、参加を決めた企業にとってもメリットがあります。
「大会当日、あの会社の人と名刺交換してみたいな」 「同じ業界の〇〇社さんは、どんな人が来るんだろう」 なんて、事前の楽しみが生まれますよね。大会当日を迎える前から、ワクワクは始まっている。そんな仕掛けができたんじゃないかな、と思っています。
戦略3:懇親会をメインイベントに! 〜主役はコミュニケーション〜
私たちが、今回の大会で一番こだわったポイントかもしれません。 それは、大会後の懇親会を全面に押し出したことです。
「えー、囲碁だけ打ちたいんだけど…」 「人見知りだから、懇親会はちょっと…」
という声も聞こえてきそうですよね(笑)。分かります、その気持ち。
でも、私たちが届けたい価値は、盤上の勝負だけじゃない。コンセプトに掲げた「ビジネス交流」を実現するためには、どうしてもこの時間が必要だったんです。
対局中は、なかなかゆっくり話せません。でも、勝負が終わってノーサイドになった後、盤を囲んで「あの手はこうでしたね」「いやー、参りました!」なんて感想戦をしたり、全然違う業界の人と「御社では、どんな福利厚生があるんですか?」「囲碁部はどのように活動していますか?」なんて雑談したり。
そういう何気ないコミュニケーションから、新しいご縁って生まれるものじゃないですか。
ただ、全面に押し出すからには、参加のハードルは極力下げたい。そこで、懇親会の内容は豪華な食事ではなく、簡単な軽食とドリンクに絞り、その分、大会全体の参加費をグッと抑えました。
主役は、豪華な料理じゃない。あくまで、皆さんのコミュニケーションです。 この割り切りが、「それなら参加してみようかな」という気軽さに繋がり、結果としてほとんどの方が最後まで残って交流を楽しんでくれました。
ちなみに懇親会最中のコンテンツも「コミュニケーションがメイン」と考えて、ビンゴ大会みたいなものは、あえて何も行っていません。
一方で最初のコミュニケーションきっかけづくりのために「全員を出身地別に席替えしてもらい、隣の人と自己紹介し合う」というアイスブレイクだけを入れてます。(結構好評です)
会場のあちこちで名刺交換が行われ、新しい笑顔の輪が広がっていく光景は、運営として本当に感動的でした。
戦略4:次回開催予定日の事前決定 〜熱狂を、次へ繋げる〜
イベント運営で一番もったいないのが、せっかく生まれた参加者の熱気が、閉会した瞬間にフッと消えてしまうこと。日常に戻れば、楽しかった記憶も少しずつ薄れていってしまいます。
その熱を、どうやって維持し、次に繋げるか。 私たちの答えはシンプルでした。
「一番盛り上がっている瞬間に、次の約束をする」
具体的には、大会の表彰式で会場のボルテージが最高潮に達しているまさにその瞬間、司会者からこうアナウンスしてもらうんです。
「選手の皆さん、お疲れ様でした!さて、ここで嬉しいお知らせです!次回の第4回大会の開催日が決定いたしました!次回は、来年の〇月〇日です!」
「おおーっ!」という会場のどよめきと拍手。 「よーし、次こそはリベンジするぞ!」と拳を握る人。 「来年もまた、このメンバーで集まりたいね」と笑い合うチーム。
参加者のポジティブな感情が最高潮にある瞬間に「次」という具体的な目標を示すことで、その熱量をそのまま「次への期待感」に変換する。まさに「鉄は熱いうちに打て」です。
もちろん、1年も先の会場を押さえ、関係各所と調整するのは簡単なことではありません。でも、この「最速発表」が、大会を継続的に成長させていくための、強力なエンジンになると私たちは信じています。
マーケティングとは「おもてなし」の設計図
ここまで、私が仕掛けた4つの戦略についてお話しさせていただきました。
- ターゲットの明確化
- 参加予定企業の社名公表
- 懇親会のメインイベント化
- 次回開催予定日の事前決定
こうして見ると、なんだか難しそうなことをやったように見えるかもしれません。 でも、突き詰めて考えれば、これらはすべて繋がっていて、とてもシンプルな想いに基づいています。
それは、「どうすれば参加者がもっと楽しめるだろう?」 「この大会ならではの価値って、なんだろう?」 を、ただひたすらに考え抜くこと。
マーケティングとは、小難しい理論やテクニックのことではありません。 相手の気持ちを想像し、「こうしたら喜んでくれるかな?」「こんな場があったら嬉しいかな?」と考えて、それを実現するための「おもてなしの設計図」を描くことなんだと、私は思っています。
今回の成功は、何よりも参加してくださった200名を超える選手の皆さん、快く送り出してくださった企業の皆さん、そして、私の無茶な提案に「面白そうじゃん!」と乗ってくれて、一緒に汗を流してくれた最高の運営メンバーのおかげです。この場を借りて、心から感謝を伝えたいです。
本当に、ありがとうございました。
このコラムが、これから何かイベントやコミュニティを立ち上げようとしている方の、ほんの少しでもヒントになれば、こんなに嬉しいことはありません。