【第1回】現場の視点―営業企画の原点となる企画力―
営業企画の中心は、チームを目標達成へ導く施策の立案です。ただし施策は当たりません。私の経験では大成功5%・成功25%・失敗70%で、3つ打って1つ当たれば十分です。現状把握と課題・理由・ゴールの整理、5人規模での小さな検証、結果を数字で回収する手順を、失敗例とあわせて解説します。
営業企画の中心的な仕事は、チームを目標達成に導く施策を立案することです。 チーム名にもなっている「企画」が、そのまま業務の本体だと考えてください。
そして、その施策は当たりません。 私の経験では、大成功が5%、まあまあの成果が出るものが25%、残る70%は実行しても成果が出ないという配分です。
だからこそ、一定のレベルまで考えたら実行し、結果を必ず数字で回収する。この回転数が営業企画の成果を決めます。ここでは、その「企画」を「立案」するためのステップを、私が経験した失敗も交えて整理します。
施策は必ず成功するものですか?
しません。「施策は100発100中にはならない」という前提から始めてください。
どんな施策も、事前に入念な準備をして練りに練ったものだったとしても、必ず成功するとは限りません。必ず成功するどころか、失敗する可能性のほうがはるかに高いと言えます。
私の過去の経験上、成功のイメージはこのくらいです。
| 結果 | 内容 | 割合 |
|---|---|---|
| 大成功 | とても成果が出た | 5% |
| 成功 | まあまあの成果が出た | 25% |
| 失敗 | 実行したが成果が出なかった | 70% |
歴戦のマーケターならもう少し良い成功率になるかもしれませんが、いずれにしても50%以上の成功にはならないと思います。
BtoBにおける施策は、大抵が失敗する、もしくはやったけれど効果が出ない、という結果に終わります。したがって、施策は一定レベルまで考えたら「まずは実行してみて効果があるかどうかを見極める」という流れが非常に重要です。
3つの施策を打って1つ当たればOK、くらいの気持ちでいてください。1つの施策に賭けるほど、当たる確率は下がります。
施策を立てる前に、何を決めておきますか?
何らかの施策を実行するときは、「何の課題をなぜ解決するのか」を明確にします。 押さえるのは次の4点です。
- 現状の把握
- 課題の明確化
- 理由の明確化
- ゴール設定
たとえば、商談の受注率をもっと高めるための施策を行う場合を想定してみましょう。
| 項目 | 記述の例 |
|---|---|
| 現状の把握 | 受注率15% |
| 課題の明確化 | 本来の想定より低く、理想との乖離がある |
| 理由の明確化 | 全営業プロセスで受注率が最も悪く、改善することで営業パーソンの生産性を高められる |
| ゴール設定 | 受注率30%になったら理想 |
このような課題を明確にしておかないと、いざ施策を実施したときに内容がブレることになります。 逆に言えば、この4行が書けない施策は、まだ実行する段階にありません。
なお、ここで使う受注率や商談率といった数字をどう集め、どう読むかについては【第2回】データの舞台裏―営業企画における分析力―で扱っています。
なぜ現場と乖離した施策が生まれるのですか?
施策を出す担当者が、現場で起こっていることを把握できていないからです。
たとえばこんな例があります。私の過去のクライアントで派遣会社があったのですが、その派遣会社では登録に来るスタッフのうち30%程度に仕事紹介をして就業をしてもらっていました。
つまり数字上は70%程度には仕事を紹介できなかったのですが、これに目をつけたマーケティングチームが**「この70%にも頑張って仕事紹介をする」**という施策を立てたのです。
仕事を紹介できない70%には、紹介できないだけの理由があります。その現状を無視して、マーケティングチームは無理な指示を出しました。
結果はどうなったか。 残りの70%のスタッフにどうにか仕事を紹介することに営業チームが注力した結果、これまでの30%のスタッフやクライアントへのフォローが疎かになり、数字を大きく落としました。
数字の上では改善余地が大きく見える場所ほど、現場には手を出していない理由があります。施策を出す前に、その理由を現場に聞いてください。
施策はどのように試せばよいですか?
現場から乖離した施策は行ってはならない、と言いましたが、とはいえ失敗を恐れては施策は打てません。重要なのは現場の視点を持ちつつ、まずは小規模で試すことです。
たとえば、100人の営業担当者がいる場合、5人くらいの営業チームで新施策を1ヶ月〜2ヶ月程度やってみて、効果を検証するというようなやり方が理想かと思います。
また、営業現場に負荷のかからない施策から優先的にやっていくことも効果的です。休眠顧客にダイレクトメールを送ってニーズを掘り起こす、といった施策は、営業チームにとって追加の負荷がかからず、比較的実施しやすいパターンと言えるでしょう。
現場の反発を受けながら施策を通しきる場面での進め方は、【第3回】実践の原点―失敗を恐れず営業組織とぶつかる実行力―で具体的な事例とともに書いています。
結果はどうやって回収しますか?
施策を行った結果は、必ず数字で回収します。 そのためには、どこまで行けば成功と言えるのかを、実行前に数字で示しておく必要があります。
「現状15%の受注率」を改善する場合は、新たな施策を打った結果が何%だったのかをしっかりと回収しましょう。
結果が20%だったのか、25%だったのか、あるいは10%だったのかがわからないと、施策の効果がわかりませんし、次の施策は打てません。
そして、ほとんど改善しなかったとしても、それは「効果の無い施策が一つ見つかった」という認識をして、次の施策に取り掛かることが重要です。 営業企画の施策は、外れることが半分以上です。うまくいかなかったとしても落ち込む必要はありません。
数字を即座に、正確に取れる状態そのものが作れていない場合は、施策より先にデータ基盤の整備が必要です。進め方はCRM導入の流れ:7つの手順と、実際に止まる2つの工程にまとめています。
企画立案でよくある失敗は何ですか?
私が見てきた範囲で、繰り返し起きるものを5つ挙げます。
1. 課題を決めずに施策から入る
「メールを配信しよう」「セミナーをやろう」と手段から始まる企画です。現状の数字とゴールが無いため、終わったあとに成功か失敗かを判定できません。
2. 一度に複数の施策を走らせる
営業現場は複数の指示を同時に受け取ると混乱します。やることは1つか2つに絞ってください。
3. 現場の負荷を計算に入れていない
施策の内容そのものが正しくても、現場の稼働が空いていなければ実行されません。追加の作業時間が1日あたり何分増えるのかを、先に見積もってください。
4. 大きすぎる目標から始める
ゴールまでの距離が長いほど、途中で軌道修正ができなくなります。まず1週間、次に1ヶ月、と区切って始めるほうが確実です。
5. 失敗を引きずる
外れた施策の総括に時間をかけすぎると、次の施策の本数が減ります。効果が無かったという事実だけを記録して、次に移ってください。
まとめ
営業企画の企画力とは、当たる施策を一発で見つける力ではありません。課題を見つけ、仮説を立て、実行し、結果を数字で回収するというサイクルを、どれだけたくさん回せるかです。
施策の打率は5%と25%と70%です。この前提に立てば、1つの施策を磨き込むより、小さく速く試す本数を増やすほうが合理的だと分かります。
勇気をもってどんどん企画を立て、施策を実行していきましょう。
営業データの整備からCRMの設計・運用定着までのご支援はCRM構築・運用をご覧ください。営業企画という組織そのものの役割は営業企画部とは?役割・必要な理由・向いている人材を解説で整理しています。営業企画について課題を感じている方は、お問い合わせよりご相談ください。

執筆者
株式会社トライエッジ代表 中野三四郎
人材派遣会社に新卒入社後、一貫してマーケティング部門に従事。営業戦略の立案、SFA/CRMの企画開発・運用、顧客分析などを行う。その後、M&Aコンサルファームやメーカーの営業企画などを経て、株式会社トライエッジを設立。【著書】「営業は仕組みで9割決まる」

FAQよくあるご質問
Q. 営業企画の施策は、どのくらいの確率で成功しますか?
私の経験では、大成功が5%、まあまあの成果が出る成功が25%、実行したが成果が出ない失敗が70%という配分です。歴戦のマーケターでも半数を超える成功率にはならないと考えています。したがって施策は1つに賭けるのではなく、3つ打って1つ当たればよいという前提で本数を確保してください。
Q. 施策を立てる前に決めておくことは何ですか?
4つです。現状の把握、課題の明確化、理由の明確化、ゴール設定です。たとえば受注率の改善なら、現状は受注率15%、課題は理想との乖離、理由は全営業プロセスで最も悪く生産性への影響が大きいこと、ゴールは受注率30%、という形で先に文章にします。ここを決めないまま始めると、実行中に施策の内容がぶれます。
Q. 新しい施策は、いきなり全社で実行してよいですか?
小さく試してください。営業担当者が100人いる組織なら、まず5人程度のチームで1〜2ヶ月実行し、効果を検証してから広げます。あわせて、営業現場に追加負荷がかからない施策から着手すると通りやすくなります。休眠顧客へダイレクトメールを送ってニーズを掘り起こす、といった施策がその例です。
Q. 現場と乖離した施策とは、どういうものですか?
現場に理由があって実行していないことを、数字だけを見て指示する施策です。私のクライアントの派遣会社では、登録スタッフの30%に仕事を紹介できていました。残り70%にも紹介せよという施策を出した結果、既存の30%とクライアントへのフォローが手薄になり、数字を大きく落としました。紹介できない70%には、紹介できない理由があったということです。
Q. 施策の結果は、どうやって振り返ればよいですか?
実行前に、どこまで行けば成功と言えるのかを数字で決めておき、実行後に同じ数字を取ります。受注率15%を改善する施策なら、結果が20%なのか25%なのか10%なのかまで回収します。ここを取らないと効果が判定できず、次の施策も決められません。改善しなかった場合は、効果の無い施策が1つ見つかったと整理して次に移ります。
出典・執筆:株式会社トライエッジ/伊能 藍子(CRM 導入・運用支援)。 2024年4月25日公開/2026年8月14日更新。