【第2回】データの舞台裏―営業企画における分析力―

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営業組織の参謀、営業企画を取り上げるシリーズ、第2回目。
今回は分析力について解説をしていきます。

マーケティング施策は現状を正しく把握し、そこから課題を発見して仮説を立てていくことが重要です。
そのためには数値データを正しく分析しなければなりません。

ではどのようにデータを分析していけばよいのでしょうか。

(前回の記事 【第1回】現場の視点―営業企画の原点となる企画力―

この記事の目次

データ分析を行う前に

データ分析を始める前に、以下の3点を確認する必要があります。

1. 目的の明確化

データ分析は目的があってこそ意味があります。まずは、具体的な分析目標を設定しましょう。例えば、「顧客の購買行動を分析し、効果的なキャンペーンを立案する」、「リードナーチャリングを改善し、成約率を向上させる」といった目標が考えられます。

 

2. 分析に必要なデータを集める

分析目標に基づいて、必要なデータを収集します。
ここで重要なのは、データの正確性です。データ分析を行うにあたって、そのデータが不正確であれば、分析そのものが意味をなしません。

 

3. 分析方法を検討する

分析目標とデータソースに基づいて、適切な分析方法を検討します。
ただ、分析というと難しそうですが、基本的には複雑な手法を取る必要はありません。
一般的にはコンバージョン率から見ていくのが良いと思います。

営業組織におけるコンバージョン率は、以下のようなものがあります。

  • トラフィック(WEB、訪問、電話などの活動数・訪問数)からのリード転換率
  • リードからの商談率
  • 商談からの受注率

まずはこの3つを見ていけば問題ありません。
これらを見たうえで、何らかの課題を発見し、その課題を解決するための方法をさらに掘り下げていく、という流れがおすすめです。

データ分析の注意事項

データ分析を行う際には、以下の点に注意が必要です。
 

1. データの正確性を追求する

分析結果の精度を左右するのは、データの正確性です。

データ分析で一番難しいのがこの部分で、データが不正確だから分析ができない、といった声が跡を絶ちません

顧客データや営業活動データを正確なものにするのは、簡単そうですが、継続してそれを実施するのは非常に難易度が高いと思います。
データの正確性を実現し、それを維持するための手法は今回の主題とは異なりますので細かくは解説しませんが、基本は

・データ構成をシンプルにする
・正確性を追求する項目を絞る
・定期的に人力でメンテナンスする

という流れになります。

データの正確性は営業現場に任せてはいけません。なぜなら営業組織にとって正確なデータを取得する、というミッションは基本的には課せられていない場合がほとんどだからです。
営業企画がデータの正確性についてはしっかりとサポートをし、見ていく必要があります。

またデータの正確性については最終的なTodoに落とし込んで行く必要があります。
例を挙げると下記のような形です。

 

(例)
  • 営業企画チームが正確にする項目は「企業名」「従業員数」「業種」とする
  • メンテナンスをするのは営業企画チームのAさんとする
  • メンテナンスは週に一回実施する

2. 分析結果を正しく解釈する

分析結果は、統計的な有意差や傾向を示すものであり、必ずしも因果関係を示すものではありません。

たとえばある1ヶ月間の商談からの受注率が10%となっていて、ここが良くない数値ではないか、と仮説を立てたとします。

ここで注意しなければならないのは、10%になってしまうような特殊要因などがなかったかの確認です。この月だけなんらか確度の低い商談が大量に作られてしまった可能性もありますし、たまたま何人かの優秀な営業担当者が長期休暇を取っていた、というようなケースもあるかもしれません。

分析結果を見たら、まずその内容について良い意味で疑いの眼を持ち、正しく解釈をする努力が重要です。

データ分析の実践方法

データ分析を行う軸は無限にあると言ってもよいですが、代表的なものは下記になります。
何からしていいのかわからない場合は、すでに数字が存在しているものから手を付けるとよいでしょう。

営業活動データや過去の商談結果などは、きちんと情報を入力していないと最初はデータが存在しません。一方でどこの顧客とどのくらいの金額で取引が発生しているかは、比較的データが整っていることが多いと言えます。
実際に存在しているデータだけでも、客の傾向などはある程度読み取れるはずです。

ですので、最初は存在しているデータから分析していくことがオススメです。

 

1. 顧客分析

自社の顧客を分析します。
顧客の属性、行動、ニーズなどを分析することで、顧客理解を深めることができます。
顧客分析には、以下のような手法が代表的です。

  • RFM分析:顧客の購入頻度、購入金額、最終購入日などを分析し、顧客を分類する
  • セグメント分析:顧客を属性、行動、ニーズなどに基づいて分類し、それぞれの特徴を分析する
  • カスタマージャーニー分析:顧客が購入に至るまでの過程を分析し、顧客体験を改善する

2. 営業活動分析

自社の営業活動が効果的に行われているかどうかを分析します。
実際には営業件数・商談数などの活動数を母数にして、受注数などの結果を分子にするのが一般的です。

これを営業担当者ごとや顧客属性ごと、時間軸ごとなどに切り分けて分析をしていきます。

3. 施策の効果測定

実際に行った施策の効果測定も営業企画の分析としては極めて重要です。
施策に対して、かかったコストや得られた成果を見ながら、施策としては良かったのかどうかを分析しましょう。

効果測定としては、下記のようなものがあります。

  • コンバージョン率:Webサイト訪問者のうち、購入や問い合わせなどの行動をした人の割合
  • 顧客獲得単価:1人の顧客を獲得するために必要な費用
  • 投資収益率:マーケティング活動に投資した金額に対する利益

データはアウトプットしよう

分析結果は営業現場に対してアウトプットすると効果的です。
たとえば、私の会社では顧客管理シートというアウトプットを作っています。

このシートは、一度でも商談した企業を一覧化して、再営業などをもれなく行うために使用します。

掲載している一覧は下記のようなものです。

  • 顧客情報(企業名・従業員数・業種)
  • 取引情報(年度ごとの売上金額)
  • 営業活動情報(自社営業担当者が各企業に実施した営業活動の件数)

データのアウトプットは、誰に向けての何の課題を解決するものなのかを明確にしないと意味がありません
経営層・営業リーダー層・営業担当者それぞれの課題は同じようで異なります。

たとえば、経営層は全体の営業数字や今後の予測などを知りたいと思っている傾向が強いですし、営業リーダーはチーム単位・営業担当者ごとの営業数字などを知りたいでしょう。営業担当者は、自分の営業成績もさることながら、自身が保有している顧客データのサマリなども有益です。

私がおすすめする帳票の一つとしては、月次のKPI推移です。

縦軸を項目、横軸を月にします。

必要な実績を月次で残していくだけのものですが、最も基本的かつ重要なものです。
これらのデータがきちんと毎月残っていけば、細かな分析もできるようになるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

データ分析は、営業企画業務において重要な役割を果たします。データ分析無き施策は無策であると言っても過言ではないので、データをしっかりと整え、施策を作っていきましょう。

本シリーズついて

営業組織が目標達成を果たすために、営業企画は様々な役割を果たしていくことになります。
本シリーズでは営業企画の具体的な役割を事例などを活用しながら解説していきます。

次回の記事もお読みいただけたら幸いです。

また、営業企画について課題を感じている方は、下記問い合わせフォームよりぜひご相談ください。

 

中野三四郎

 

執筆者  株式会社トライエッジ代表 中野三四郎

 

人材派遣会社に新卒入社後、一貫してマーケティング部門に従事。営業戦略の立案、SFA/CRMの企画開発・運用、顧客分析などを行う。その後、M&Aコンサルファームやメーカーの営業企画などを経て、株式会社トライエッジを設立。【著書】「営業は仕組みで9割決まる」


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