【第3回】実践の原点―失敗を恐れず営業組織とぶつかる実行力―

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営業組織の参謀、営業企画を取り上げるシリーズ、第3回目。

営業組織を成功に導くためには、時には失敗を乗り越え、正面からぶつかり合わなければいけません。

営業現場とぶつかり合いながらも密接に連携をし、施策を実行していく。今回はその実践の現場を解説していきます。

(前回の記事 第2回:データの舞台裏―営業企画における分析力―

この記事の目次

あるプロジェクトでの話

私が以前関わっていた営業プロジェクトでの話です。
それは、飲食店向けのある新サービスを拡販するという内容で、具体的な業務としては取引のない顧客へのアポイントメント獲得、商談、受注までを実行する内容でした。

プロジェクトは5名でスタート。ターゲットとなる顧客候補をリストアップし、営業担当がそれぞれ電話でアプローチし、顧客との接点を持つべく営業活動を開始しました。

数値目標が当然あったのですが、新規の商品ということもあり受注目標に対しては大きく未達の状況。

 

そのプロジェクトは3ヶ月の予定だったのですが、1ヶ月経過した段階で私が関わることになりました。


まず私が行ったのは数字の確認です。営業活動の行動量、顧客との接触率、接触からの受注率を見ていきました。
ここでわかったのは、顧客への接触率と受注率は悪くなかったのですが、行動量が大きく未達成となっていました。


現場のリーダーに事情を聞いたところ「飲食店はお昼前後と夕方は忙しいので営業可能な時間が限られる。あと、アポイントをとれた企業には商談をしないといけないので営業活動の時間が制限される。」というものでした。

行動量の不足が原因と見た私は、チーム全員に行動量目標を明示しました。指示した内容は下記のとおりです。

 

  • 一人あたりの電話営業件数は一日50件と設定する
  • チームは5人なので、チーム全体で250件とし、必達目標とする
  • 個人が営業件数未達成でもチーム全体で達成していればOKとする(他の人が多く営業して不足分を補ってもOK)
  • 顧客への接触数、受注数については結果を問わないものとする
  • ここまでの営業活動量不足を挽回するため、ここから一週間だけは営業件数を70件とする
  • いったんは営業件数だけを追い、受注目標は気にしなくてよいものとする
私がこの施策を掲げ、営業チームに伝達をしたところ、現場からは否定的な意見が多く出ました。


典型的なのは
「営業件数を増やすと商談が増えて別作業の時間も増える。その結果営業に手が回らなくなる」
といったものでした。

私は意見は意見としてききつつ、まずはやってみることが重要であることを丁寧に説明し、課題が出てきたら都度対応する旨を、営業担当者一人一人に個別にしっかりと説明しました

この施策が実行されたあと、私は一週間現場に張り付き、毎日数字を見て現場とコミュニケーションを取りました。チームの営業活動件数を達成したらチームを称賛し、翌日も頑張りましょうと声をかけました。

結果がどうなったかというと、営業活動数が担保されたため、顧客との接触件数が急増。結果として受注件数も急回復し、目標は3ヶ月目に終わるときは無事に達成されました。

顧客との接触数が増えたことで営業活動数が減ることが当初懸念されましたが、外出先の営業担当者がそれぞれ外から携帯電話などでスキマ時間に営業活動を行ったことでなんとか目標活動数を確保する、という方法で乗り切りました。

施策は実行しないと意味がない

先ほど挙げた事例は、私が実際に体験した事例で、数字などはすこし変えていますが、ほぼ当時の状況を再現しています。

ここで言いたいのは「結果的に目標が達成された」ということではなく、

必要な施策を行うときは、営業現場からの反発があったときも、きちんとコミュニケーションを取って納得してもらうことが重要

ということです。
マーケティング施策は作っただけでは意味がなく、営業現場に施策の通りに動いてもらわなければ意味がありません。施策はときに「めんどくさい」であったり「むずかしい」といったような課題に直面します。

こういった課題に直面するときには、コミュニケーションを密にして、しっかりと進めることが大切です。

施策は複雑なものでは意味がない

今回の事例では「営業活動量を確保する」という施策を実行したことを説明しました。ここで重要なのは「施策は複雑なものではなく、シンプルかつわかりやすいものであることが必要」ということです。

営業活動を増大させ、顧客との商談内容にテコ入れをし、ターゲットリストを見直す、というような「複数の施策」を同時に走らせると複雑性が増し、営業現場は混乱することになります。

今回の施策がうまくいったのは「チームに営業活動量の目標を設定し必ず達成すること」というシンプルかつ明確な目標を立て、その一方で「この間、顧客との接触率と受注率は結果を問わない」という引き算で営業担当者のやるべきことを明確にしたことにあります。

このように、実行を伴う施策はシンプルかつ明確でなければなりません。

施策の実行力を高めるための4つのポイント

施策の実行力を高めていくためには、いくつかポイントがありますが、4つにまとめましたので参考にしてください。


やることを絞る

課題が多いと、あれもこれも手を出したくなりますが、やるべきことの優先順位を決めて、実行すべきことを絞ることがとても重要です。
1つか2つに絞りましょう

 

小さな目標から始める

いきなり大きな目標を立てると、そこまでのプロセスが長くなりすぎ、実行する方もあまり気分があがりません。
そのためにも、施策は身近な小さな目標から立てるのがおすすめです。今回の事例でも「施策はまず一週間実行してみて、その後どうするかを考える」という短い期間でまずはスタートしました。そうすることで軌道修正も図りやすくなります。


失敗をくよくよしない

施策は失敗がつきものです。失敗をしたからといって、いちいちくよくよしていては、営業企画は務まりません。
失敗は糧にして次に活かす、という姿勢で、むしろどんどん失敗していいんだと思ってやりましょう。

完璧主義にならない

施策は7割が予定通りいけばOK、くらいの心持ちでいましょう。100%完璧にうまくいくこと自体も稀です。完璧にやらなければ、と思うと施策を実行する気持ちも萎えてしまいます。完璧主義は禁物です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
施策は実行してなんぼですし、営業現場を動かしてこその施策です。
立てた施策をしっかりと実行するために、ぜひ工夫しながら進めてみてください。

本シリーズついて

営業組織が目標達成を果たすために、営業企画は様々な役割を果たしていくことになります。
本シリーズでは営業企画の具体的な役割を事例などを活用しながら解説していきます。

次回の記事もお読みいただけたら幸いです。

また、営業企画について課題を感じている方は、下記問い合わせフォームよりぜひご相談ください。

 

中野三四郎

 

執筆者  株式会社トライエッジ代表 中野三四郎

 

人材派遣会社に新卒入社後、一貫してマーケティング部門に従事。営業戦略の立案、SFA/CRMの企画開発・運用、顧客分析などを行う。その後、M&Aコンサルファームやメーカーの営業企画などを経て、株式会社トライエッジを設立。【著書】「営業は仕組みで9割決まる」


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