自社の記事150本をAEO対応した記録:優先順位のつけ方と、やらなかったこと
AEO支援を行うトライエッジが、自社の記事約150本をAI検索向けに改善した過程をそのまま公開します。全記事に一律で手を入れず優先順位をつけた4つの基準、作業単位を指示書に固定して常時5件を維持した理由、あえて対象から外した記事の判断、そして着手前に測っておくべきだったベースライン指標までをまとめました。
全記事に一律で手を入れるのは、やめたほうがいいです
トライエッジは自社サイトに、2026年8月時点で287本の記事を公開しています。AI検索に対応させるにあたって最初に決めたのは、この全部には手を入れないということでした。
結果として対象にしたのは約150本です。さらにその中で3段階の優先度をつけ、上位から順に着手しました。
この記事では、その優先順位のつけ方と、途中で対象から外した記事の判断、そして着手前に測っておくべきだったことを、実際の数字とともに公開します。AEO対応をこれから始める方が、同じ回り道をしないために書いています。
Q. なぜ全記事を対象にしなかったのですか?
記事の価値が均等に分布していなかったからです。
自社サイトを調べたところ、たった2本の記事でサイト全体の表示回数の約23%を占めていました。信用調査会社を紹介した記事と、別の企業データベースを紹介した記事です。一方で、表示回数が1桁の記事も多数ありました。
この構造で全記事に均等に工数をかけると、成果に結びつかない記事に労力の大半を投じることになります。まず上位から手をつけるのが合理的です。
もう一つ、着手前の調査でわかったことがあります。2026年8月上旬の時点で、サイト全体の約530ページのうちFAQ構造化データを持つページは60ページ、**全体の11%**しかありませんでした。実装済みのつもりでいた領域が、実際にはほとんど手つかずだったわけです。
Q. 優先順位はどうやってつけましたか?
次の4つを1枚の表に並べ、上から順にP0・P1・P2を割り当てました。
| 見た指標 | 何がわかるか |
|---|---|
| 検索での表示回数 | 需要の大きさ |
| 検索でのクリック数 | いま実際に選ばれているか |
| 検索での掲載順位 | 伸びしろの有無 |
| AI検索経由での企業の来訪実績 | 商談につながる読まれ方をしているか |
このうち最も重視したのは、表示回数が多いのにクリックが少ない記事です。すでに読まれる位置に表示されているのに選ばれていない状態なので、改善の余地が最も大きくなります。
たとえば先ほどの信用調査会社の記事は、表示回数9,486に対してクリックはわずか17、クリック率は0.18%でした。順位の問題ではなく、タイトルと説明文が選ばれる形になっていなかったわけです。こういう記事から手をつけます。
逆に、順位が50位より下で表示回数も少ない記事は、多少手を入れても動きません。ここはP2に落として後回しにしました。
Q. AIからの参照実績はどう測りましたか?
自社サイトの調査時点で、Microsoft Copilotからの被引用は340回・25ページでした。うち1ページだけで54回を占めています。
ここでわかったのは、引用されているページと、検索で読まれているページは一致しないということです。検索順位が高い記事がAIに引用されているとは限らず、その逆もあります。だから両方を並べて見る必要があります。
AI検索経由で自社サイトに来た企業を把握する仕組みも並行して用意しました。ここまで揃うと、「引用された」の先を商談まで追えるようになります。
Q. 作業はどう回しましたか?
1記事ごとに指示書を作り、その指示書を常に5件手元に置くという運用にしました。
指示書には次の5つを必ず入れます。
- リード文の案(結論を先に置く形に書き直したもの)
- メタディスクリプションの案(140〜160字。現行の文字数も併記)
- FAQ5問(質問と答えの全文)
- 構造化データのJSON-LD(そのまま貼れる完成形)
- 実装手順(どの画面のどこに何を貼るか)
作業者が判断する余地を残さないところまで書き切るのがポイントです。「FAQを追加してください」ではなく、FAQの本文そのものを渡す。 ここを曖昧にすると、作業が止まるか、品質がばらつきます。
5件維持にしたのは、手元の在庫が切れると作業が止まるからです。1件ずつ渡す運用にすると、レビューの往復のたびに作業者の手が空きます。逆に一度に30件渡すと、方針変更のたびに作り直しになります。
Q. あえてやらなかったことは何ですか?
自社が扱っていない他社ツールを単体で紹介する記事を、途中で対象から外しました。
これらの記事には一定の流入がありました。それでも外したのは、記事を強化するとAIに専門領域を誤認させるからです。自社が導入支援をしていない製品の解説記事が増えると、「この会社は何の会社なのか」という輪郭がぼやけます。
比較記事は残しました。自社が扱う製品が主語になっているものは、専門領域の主張を強めるからです。同じ「他社製品に言及する記事」でも、単体紹介と比較では意味が逆になります。
すでに公開して成果が出ている記事の取り下げまではしていません。新たに強化しない、という判断です。
Q. 先に測っておくべきだったことはありますか?
あります。着手前のベースラインです。
トライエッジは記事の改善と並行してサイト自体の刷新を進め、新サイトを2026年8月9日に公開しました。その結果、刷新前と刷新後を比較するための基準値の取得が中途半端になりました。 記事改善の効果なのか、サイト刷新の効果なのか、切り分けが難しくなっています。
これから始める方には、着手前に次の3つを記録しておくことを強くおすすめします。
- 検索での表示回数・クリック数・平均掲載順位(サイト全体と、上位20記事それぞれ)
- AI検索経由の流入数(計測設定を先に済ませておく)
- AIに実際に質問したときの引用の有無(同じ質問文を保存しておく)
特に3つ目を軽視しがちです。 数ヶ月後に「引用されるようになった」と言うためには、されていなかった状態の記録が要ります。
Q. やってみてわかったことは何ですか?
4つあります。
1. 実装より、FAQ5問を書くほうが重い 工数の大半はここです。実装は20分で終わります。
2. 一般論の答えは実装しても意味がない 「状況によって異なります」という答えは、構造化データとして正しくても引用されません。手順・数値・条件のいずれかが入っているかが分かれ目です。
3. 記事を増やすより、専門領域を絞るほうが効く 何を書かないかの判断が、書く判断と同じくらい効きます。
4. 数字は3ヶ月動かない これが最も精神的に重い部分です。動かない期間を見込まずに始めると、効果が出る前に打ち切ることになります。
まとめ
AEO対応は、全記事に構造化データを入れる作業ではありません。どの記事に手を入れないかを決める作業が半分を占めます。
トライエッジは287本のうち約150本に絞り、流入実績とAIからの参照実績で3段階に分け、上位から着手しました。作業単位は指示書に固定し、常に5件を手元に置く運用にしています。回り道もしました。着手前のベースラインを取り損ねたことが最大の反省です。
自社サイトが現時点でAI検索にどう見えているかは無料AEO診断で確認できます。取り組み全体の設計はAEO対策、用語の定義は用語集にまとめています。HubSpotでの具体的な実装手順はHubSpotのブログ記事にFAQ構造化データを追加する方法、成果が出るまでの時間の見立てはAEO対策の効果は4〜9ヶ月目に谷が来るで解説しています。
FAQよくあるご質問
Q. 何本くらいから始めるべきですか?
本数ではなく、上位20%の記事が流入の何割を占めているかで判断してください。トライエッジの場合、2本の記事だけでサイト全体の表示回数の約23%を占めていました。この構造なら、まず上位数十本に絞るのが合理的です。全記事に一律で着手すると、成果の出ない記事に工数の大半を使うことになります。
Q. 優先順位はどうやってつけましたか?
流入実績(検索での表示回数・クリック数・掲載順位)と、AI検索経由での企業の来訪実績を並べ、上位からP0・P1・P2の3段階に分けました。特に重視したのは「表示回数は多いがクリックが少ない」記事です。すでに読まれる位置にありながら選ばれていない状態なので、改善の余地が最も大きくなります。
Q. 対象から外した記事はありますか?
自社が扱っていない他社ツールを単体で紹介している記事は、途中で対象から外しました。流入があっても、その記事を強化するとAIに専門領域を誤って認識させるためです。何を書くかと同じくらい、何を書かないかがAI検索では効きます。
Q. 1本あたりどれくらいの工数がかかりますか?
リード文の書き直し、メタディスクリプションの調整、FAQ5問の作成、構造化データの実装で、1本あたり2〜3時間が目安です。このうち大半はFAQ5問を考える時間で、実装作業そのものは20分程度です。工数の見積もりを実装時間で考えると必ず足りなくなります。
Q. 効果はいつごろから出ますか?
検索結果への反映は数日から2週間ですが、AI検索での引用が動くまでには数ヶ月かかります。着手して2〜3ヶ月は数値がほとんど動かない期間が続くと考えておいてください。この期間を見込まずに始めると、効果が出る前に打ち切ることになります。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/中野 三四郎(代表取締役CEO)。 2026年8月18日公開。