BtoB企業のAEO対策:AIに「比較され、選ばれる」ための実務
BtoBのAI検索では、購買担当が「A社とB社とC社を比較して、優れている順に順位をつけて」と依頼する形の質問が実際に発生しています。当社サイトのSearch Console実測データをもとに、BtoB特有の3つの事情と、比較の土俵に名前が載るために何を用意すべきかを整理します。
BtoBのAI検索では、購買担当が「A社とB社とC社を比較して、優れている順に順位をつけて」と依頼する形が実際に発生しています。
つまりBtoBのAEOは、個別の記事で上位を取る話ではなく、比較の土俵に名前が載るかどうかの話です。
この記事では、当社サイトで実際に観測されたクエリを示したうえで、BtoB特有の3つの事情と、比較で参照されるために何を用意すべきかを整理します。
実際に観測されているクエリ
当社サイト(triedge.co.jp)のSearch Consoleで、2026年5月16日〜8月13日に記録されたクエリです。
| クエリ | 表示 | 平均順位 |
|---|---|---|
| bownowとhubspotとsalesforceとzohoとadobeのアンケートフォーム機能を比較してください。優れている順に順位をつけてください。 | 1 | 2.0位 |
| salesforce sales cloudとmazrica salesとhubspotとzoho crmとeセールスマネージャーの営業支援ツールを比較してください。優れている順に順位をつけてください。 | 1 | 6.0位 |
| zohoとmicrosoftとhubspotとsalesforceとmazricaの顧客管理クラウドを比較してください。 | 1 | 6.0位 |
| データセキュリティとユーザーインターフェースの使いやすさの両方を兼ね備えたsfaツールはどれですか? | 1 | 1.0位 |
| 価格と機能のバランスが取れている企業データベースツールはどれですか? | 1 | 6.0位 |
この形の質問は、人間が検索窓に打ち込むものではありません。 「優れている順に順位をつけてください」という指示は、AIに向けたものです。BtoBの購買担当が、候補となるベンダーを並べてAIに評価させている、ということです。
注目すべきは順位です。表示回数は1〜8回と極端に少ないのに、順位は1〜6位が並んでいます。同じ期間の通常キーワード(「aeo対策」など31語)の平均順位は17.6位でした。
そして、これらのクエリからのクリックはすべて0でした。
BtoB特有の3つの事情
上記のデータから、BtoCとは異なる前提が3つ見えます。
1. 質問の形が「比較の依頼」になる
BtoCでは「近くのおすすめの店」のような単発の質問が中心ですが、BtoBでは複数のベンダー名を並べて評価を求める形になります。
これは購買のプロセスがそうなっているためです。BtoBの担当者は、社内で複数候補を比較した資料を作る必要があります。その作業をAIに手伝わせている、という構図です。
ここで名前が挙がらない企業は、候補リストにすら入りません。 個別の記事が何位かという話の前に、比較の対象として認識されているかどうかが問われます。
2. 押さえるべき質問の数が少ない
市場が狭いぶん、対象となる質問も限られます。単一商材を国内向けに展開しているBtoB企業であれば、押さえるべきプロンプトは15〜25程度に収まることが多くあります。
これは有利な条件です。BtoCのように無数の質問を追う必要がなく、書き出した一覧を潰していけば範囲が閉じます。
3. クリックと成果の時差が大きい
BtoBの検討期間は数ヶ月に及びます。AIの回答で名前を見た担当者が、その場で問い合わせることはまれです。社内で予算がつき、稟議が回った段階で、はじめて接触があります。
そのうえAI検索ではクリックが発生しないため、従来の指標では何も起きていないように見えます。短期のアクセス数で判断すると、必ず「効果がない」という結論になります。
測り方についてはAEOの効果測定で扱っています。
比較で参照されるために用意するもの
AIが比較の回答を作るとき、必要としているのは各社の違いです。違いを示せる材料を置いておく、というのが基本の考え方になります。
1. 条件が明示されたページ
価格、最低利用期間、対応範囲、必要な人数といった条件が数字で書かれているページです。「お問い合わせください」しか書かれていないと、比較表に入れる値がありません。
自社の価格を出しにくい場合でも、「初期費用の有無」「契約期間の単位」といった条件だけでも明示する価値があります。
2. 向いていないケースを書いた記事
これが最も効きます。 そして最もやられていません。
「どんな企業にも最適です」と書かれたページは、差を示していないため比較の材料になりません。逆に「基幹システムとのリアルタイム連携が前提の場合は適しません」のように適さない条件が書かれているページは、判断材料として引用されます。
自社に不利に見える情報を出すことになりますが、そもそも適さない相手からの問い合わせは、受注しないか、受注しても定着しません。
3. 業種と規模が明記された事例
「大手製造業A社」ではなく、「従業員80名の製造業で、営業6名がZoho CRMを利用」のように具体的に書きます。AIが「自社と近い規模の事例はあるか」という質問に答えられるようになります。
4. 第三者サイトでの言及
AIは複数の情報源を突き合わせます。自社サイトの主張だけでは裏づけが弱くなります。 比較サイトへの掲載、導入先による言及、業界メディアでの取材記事などが、回答の材料として使われます。
ここは自社だけで完結しない部分ですが、少なくとも「掲載されている情報が古いまま放置されていないか」は確認できます。
情報の整え方そのものはBtoB企業がChatGPTに引用される情報設計の進め方で詳しく扱っています。
よくある誤り
1. 記事の本数を増やそうとする
BtoBで押さえるべき質問は15〜25程度です。本数ではなく、その質問に正面から答えている記事が1本あるかどうかが問われます。周辺記事を量産しても比較の土俵には乗りません。
2. 自社に都合の良いことだけ書く
前述のとおり、差を示していない情報は引用されません。「弊社が最適です」は比較の材料になりません。
3. クリック数で評価する
観測データのとおり、AI検索由来のクエリからのクリックは発生しません。この指標で判断する限り、AEOは常に「効果なし」と結論されます。
4. 用語の議論に時間を使う
AEO、GEO、LLMOのどれを使うかで施策は変わりません。用語の整理はAEO・GEO・LLMO・SEOの違いにまとめてあります。
まとめ
BtoBのAI検索では、購買担当がベンダーを並べてAIに比較させる形の質問が実際に発生しています。当社の実測では、この種のクエリで平均10.4位、最上位で2位を記録しました。表示回数は少なく、クリックは0でした。
やるべきことは、比較の材料を置くことです。条件が明示されたページ、向いていないケースを書いた記事、業種と規模が具体的な事例、そして第三者による言及。この4つが、AIが違いを説明するときに参照する材料になります。
そして評価の指標を変えてください。クリック数では、この取り組みの成果は永遠に見えません。
トライエッジではBtoB企業のAI検索対策を支援しています。詳しくはAEO(AI検索最適化)支援をご覧ください。自社が今どう見えているかは無料AEO診断で確認できます。ご相談はお問い合わせより承ります。
FAQよくあるご質問
Q. BtoB企業のAEO対策は、BtoCと何が違いますか?
3つ違います。1つ目は、質問の形がベンダー比較になること。「A社とB社を比較して」という依頼型の質問が実際に発生しています。2つ目は、対象となる質問の数が少ないこと。市場が狭いぶん、押さえるべきプロンプトは15〜25程度に収まることが多くあります。3つ目は、検討期間が長く、AIで名前を知ってから問い合わせまでに数ヶ月かかることです。
Q. BtoBでAIに引用されるには何を用意すればよいですか?
比較で参照される材料です。具体的には、価格や条件が明示されたページ、自社が向いていないケースまで書いた記事、業種や規模を明記した事例、そして第三者サイトでの言及です。AIは複数の情報源を突き合わせるため、自社サイトの主張だけでは裏づけが弱くなります。
Q. 自社が向いていないケースまで書く必要がありますか?
書いたほうが引用されやすくなります。AIが比較の回答を作るとき、必要としているのは各社の違いです。「どんな企業にも最適」と書かれたページは差を示せないため、比較の材料になりません。適さない条件を明示しているページのほうが、判断材料として引用されます。
Q. BtoBのAEOは、どれくらいで成果が出ますか?
AIの回答に登場するかどうかは、コンテンツを整えてから数週間〜数ヶ月で変化が見え始めます。ただし問い合わせまで含めた成果は、BtoBの検討期間が加わるためさらに時間がかかります。AIで名前を知った担当者が、社内の予算がついた段階で問い合わせてくる、という順序になるためです。短期のクリック数では判断できません。
Q. 問い合わせが増えないのに、やる意味はありますか?
評価する指標を変える必要があります。AI検索ではユーザーが回答を読んで完結するため、クリックが増えないまま名前だけが記憶に残ります。そのため、指名検索の件数、問い合わせフォームの「どこで知ったか」の回答、商談の初回接触時に相手が自社を知っていた割合、といった指標で見るほうが実態に合います。
出典・執筆:株式会社トライエッジ/中野 三四郎(代表取締役CEO)。 2026年8月14日公開。