HubSpotの料金体系がわかりにくい理由:5つの軸と初年度総額の出し方
HubSpotの料金は、製品・エディション・シート数・マーケティングコンタクト件数・導入支援という5つの軸の掛け算で決まります。分かりにくさの正体はこの構造にあります。2026年8月時点の公式価格をもとに、5つの軸が何を決めるのかと、初年度の総額を4ステップで見積もる手順を整理します。
HubSpotの料金が分かりにくいのは、金額が複雑だからではありません。価格が5つの軸の掛け算で決まる構造だからです。
5つの軸とは、どの製品(Hub)を使うか、そのエディション、編集操作をする人数(シート)、配信対象にする連絡先の件数(マーケティングコンタクト)、そして初回だけ発生する導入支援費用です。 どれか1つだけを見て「月額いくら」と判断すると、初年度の総額が数十万円単位でずれます。
以下では、5つの軸がそれぞれ何を決めているのかと、初年度の総額を出す手順を、2026年8月時点の公式価格をもとに整理します。
なぜ料金表を見ても自社の金額が出てこないのですか?
HubSpotの価格が「1ユーザー月額いくら」で完結しないためです。
多くのクラウドサービスは、ユーザー数 × 単価という1つの軸で金額が決まります。HubSpotはそうなっていません。同じ「Marketing Hub Professional」を契約していても、会社によって年間の支払額は変わります。編集する人数が違えば変わり、配信対象の連絡先件数が違っても変わり、契約初年度かどうかでも変わります。
つまり、料金表は金額を決めるための材料の一部でしかありません。 自社の数字(編集する人数と、配信対象にする連絡先の件数)を当てはめて初めて金額が確定します。逆に言えば、この2つの数字を先に用意しておけば、見積もりは短時間で出せます。
5つの軸はそれぞれ何を決めていますか?
軸1:どの製品(Hub)を使うか
HubSpotは単一の製品ではなく、目的別の製品の集まりです。Marketing Hub(見込み客の獲得と育成)、Sales Hub(商談管理)、Service Hub(問い合わせ対応)、Content Hub(サイトとブログの運用)、Data Hub(データ連携)、Revenue Hub(見積・請求)などがあり、必要なものだけを契約します。
料金はこの製品ごとに発生します。「HubSpotの料金」という単一の金額は存在せず、契約する製品の組み合わせで決まります。土台となる顧客データベースは無料で、製品を1つも契約しない状態でも使えます。製品構成そのものはHubSpotとは?製品構成とインバウンドマーケティングの進め方で扱っています。
なお、Hubとは別に単体で契約できるツールもあります。AI検索での言及を追跡するHubSpot AEOは月額6,000円で、他の製品を契約していなくても使えます(HubSpot AEOの料金とできること)。「Hubを契約しないと何も使えない」わけではないという点は、見積もりの前提として押さえておく価値があります。
軸2:エディション
各製品に、無料版・Starter・Professional・Enterpriseという段階があります。上に行くほど自動化の細かさと分析の深さが増えます。
この軸で注意すべきは、段差の大きさです。 Marketing Hubの2026年8月時点の公式価格では、Starterが1シートあたり月額2,400円、Professionalが月額96,000円、Enterpriseが月額432,000円です。ProfessionalからEnterpriseへ上げると、月額は4.5倍になります。
エディションは「必要な機能が含まれる最も下の段」を選ぶのが原則です。 上位版の機能を使う予定がないまま契約すると、差額がそのまま無駄になります。エディションごとの機能差と選び方はHubSpot Marketing Hubの料金と機能:3つのエディションの選び方にまとめています。
軸3:シート(編集操作をする人数)
シートは、HubSpotの中でデータを編集したり設定を変更したりする人の枠です。
Professionalにはコアシートが3件、Enterpriseには5件含まれます。それを超える人数が編集操作をする場合、追加分に費用がかかります(2026年8月時点でProfessionalは月額5,400円から、Enterpriseは月額9,000円から)。閲覧しかしない人は、追加費用なしのシートで足ります。
この軸には、見落とされやすい仕組みがもう1つあります。シート単価は、契約している製品のうち最も上位のエディションを基準に決まります。 Marketing Hub ProfessionalとSales Hub Enterpriseを併用すると、シート単価はEnterprise基準になります。製品を1つずつ足していく進め方をしている場合、途中で単価の基準が切り替わることがあります。
軸4:マーケティングコンタクト(配信対象の件数)
メールや広告の配信対象にできる連絡先の件数です。含まれる件数は、Starterが1,000件、Professionalが2,000件、Enterpriseが10,000件で、これを超える分は追加費用になります。
ここで最も誤解されるのが、保有している連絡先の全件が課金対象だという思い込みです。 課金対象は配信対象にした連絡先だけで、配信しない連絡先は「マーケティング対象外」として無料で保存できます。上限は1,500万件です。
展示会や名刺のデータを一括で取り込む場合も、全件を配信対象にする必要はありません。取り込む件数ではなく、実際に送る相手の件数で見積もってください。
軸5:導入支援(Professional以上は1回限りで必須)
契約時に自動的に請求される1回限りの費用です。2026年8月時点でProfessionalが360,000円、Enterpriseが840,000円で、任意のオプションではなく購入が必須です。Starterには購入義務がありません。
この軸だけが月額ではないため、月額の比較表からこぼれ落ちます。 初年度の総額を見誤る原因のほとんどが、この費用の見落としです。
初年度の総額はどう見積もればよいですか?
4つのステップで出せます。
- 使う製品とエディションを決める(必要な機能が含まれる最も下の段)
- 編集操作をする人数を数える(閲覧だけの人は除く)
- 配信対象にする連絡先の件数を数える(保有している全件ではない)
- 月額 × 12 に、導入支援費用と超過分を足す
Marketing Hub Professionalを、編集3名・配信対象1,800件で使う場合の試算です(2026年8月時点の公式価格)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額 96,000円 × 12ヶ月 | 1,152,000円 |
| 導入支援(1回限り・必須) | 360,000円 |
| 追加シート(3件のコアシート内に収まる) | 0円 |
| マーケティングコンタクト超過(2,000件以内) | 0円 |
| 初年度の総額 | 1,512,000円 |
| (参考)2年目以降の年額 | 1,152,000円 |
初年度と2年目で360,000円の差が出ます。 2年目の金額で予算を通すと初年度が足りず、初年度の金額で毎年組むと2年目以降に余ります。稟議を出す段階で、初年度と次年度を分けて書いておくと差し戻しが減ります。
編集する人数が3名を超える場合、配信対象が2,000件を超える場合は、それぞれ超過分を足してください。超過分の単価は契約条件によって変わるため、見積もり時に必ず確認する項目です。最新の条件はHubSpot公式の料金ページでご確認ください。
同じProfessionalでも会社によって総額が違うのはなぜですか?
変動するのはシートとマーケティングコンタクトの2つで、増え方の性質が違うためです。
シートは人数に比例して増えます。 編集する人が1名増えるごとに費用が乗るため、社内で「誰が編集し、誰は閲覧だけか」を整理すると総額が下がります。営業部門の全員に編集権限を配る設計にしていると、ここが膨らみます。
マーケティングコンタクトは、運用のやり方で決まります。 「とりあえず全件を配信対象にする」運用にしていると、名刺を取り込むたびに費用が増えます。配信するセグメントを決めてから対象を指定する運用にすると、同じデータ量でも課金対象は増えません。
つまり、契約後に総額を左右するのは価格表ではなく運用設計です。 契約前にこの2つの方針を決めておくことが、実質的なコスト管理になります。
見積もりでよくある4つの失敗
支援の現場で繰り返し目にするものです。
1. 月額 × 12 だけで初年度を計算する
Professionalなら360,000円、Enterpriseなら840,000円の導入支援費用が抜けます。月額だけで他社ツールと比較すると、初年度の総額の順位が入れ替わることがあります。
2. 保有している連絡先の全件をマーケティングコンタクトとして数える
課金対象は配信対象にした連絡先だけです。データベースに何件入っているかと、課金対象が何件かは別の数字です。ここを混同すると、実際より数段階上のエディションが必要だと判断してしまいます。
3. 閲覧しかしない人の分までシートを買う
管理職や他部署のメンバーが「見るだけ」の場合、追加費用なしのシートで足ります。契約前に、編集する人と閲覧する人のリストを分けて作ってください。
4. 製品を足すときにシート単価の基準を確認しない
シート単価は契約中の製品のうち最上位のエディション基準です。下位エディションの製品に上位エディションの製品を足すと、既存分のシート単価まで上がります。製品を追加するときは、追加する製品の料金だけでなく、全体のシート費用を再計算してください。
予算が足りない場合、どこを削れますか?
削る順番には優先度があります。効果の大きい順に3つです。
1. シートを絞る
閲覧のみのメンバーを追加費用なしのシートに移します。運用に影響が出ないため、最初に手を付けるべき箇所です。
2. マーケティングコンタクトを絞る
配信対象にしない連絡先を「マーケティング対象外」へ移します。データは残るため、後から配信対象に戻せます。
3. エディションを下げる
判断基準は1つで、条件分岐のあるワークフローが必要かどうかです。 「見込み客の状態によって送る内容を変える」運用をしないのであれば、Professionalは要りません。Professionalを見送れば、月額の差だけでなく導入支援費用360,000円も発生しません。
さらに手前の選択肢として、無料版から始めるという進め方があります。連絡先の管理、フォーム、メール配信、基本的なレポートは無料で使えるため、まずデータを集め、手が回らなくなった工程から有料へ移る順番が取れます。無料で使える範囲は無料で使えるHubSpot CRMの機能とおすすめの企業にまとめています。
まとめ
HubSpotの料金は、製品・エディション・シート・マーケティングコンタクト・導入支援の5つの軸の掛け算で決まります。料金表だけで自社の金額が出ないのは、この構造のためです。
初年度の総額を出すには、使う製品とエディションを決め、編集する人数と配信対象の件数を数え、月額 × 12 に導入支援費用を足します。Marketing Hub Professionalを編集3名・配信対象1,800件で使う場合、初年度は1,512,000円、2年目以降は1,152,000円です(2026年8月時点の公式価格)。
契約後の総額を左右するのは、価格表ではなく運用設計です。誰が編集するか、誰に配信するかを先に決めておくことが、そのままコスト管理になります。
トライエッジはHubSpotゴールドパートナーとして、プラン選定の段階から導入・運用までを支援しています。詳しくはHubSpot 導入・運用支援をご覧ください。見積もりの前提整理からのご相談もお問い合わせより承ります。
FAQよくあるご質問
Q. HubSpotの料金はなぜ分かりにくいのですか?
1ユーザーあたりの単価だけでは金額が決まらないためです。価格は5つの軸の掛け算になっています。どの製品を使うか、そのエディション、編集操作をする人数(シート)、配信対象にする連絡先の件数(マーケティングコンタクト)、そして初回だけ発生する導入支援費用です。料金表を見ても自社の金額が出てこないのは、自社の人数と連絡先件数を当てはめて初めて確定する構造だからです。
Q. HubSpotの初年度費用はどう計算すればよいですか?
4ステップです。1つ目に使う製品とエディションを決める、2つ目に編集操作をする人数を数える、3つ目に配信対象にする連絡先の件数を数える、4つ目に月額かける12に導入支援費用と超過分を足します。Marketing Hub Professionalを編集3名・配信対象1,800件で使う場合、月額96,000円かける12ヶ月で1,152,000円、これに導入支援360,000円を加えて初年度は1,512,000円です(2026年8月時点の公式価格)。
Q. マーケティングコンタクトは保有している連絡先の全件が課金対象ですか?
違います。課金対象になるのはメールや広告の配信対象にする連絡先だけです。配信対象にしない連絡先はマーケティング対象外として無料で保存でき、上限は1,500万件です。各エディションに含まれる件数は、Starterが1,000件、Professionalが2,000件、Enterpriseが10,000件です。展示会で集めた名刺を全件取り込んでも、配信しない分は課金対象にする必要がありません。
Q. 複数のHubを契約するとシートの料金はどうなりますか?
シート単価は、契約している製品のうち最も上位のエディションを基準に決まります。たとえばMarketing Hub ProfessionalとSales Hub Enterpriseを併用すると、シート単価はEnterprise基準になります。製品を1つずつ足していく進め方では、途中でこの基準が切り替わって想定より単価が上がることがあるため、上位エディションを足す前に全体のシート費用を再計算してください。
Q. 予算が足りない場合、どこから削ればよいですか?
削る順番は3つです。1つ目はシートで、閲覧しかしない人は追加費用なしのシートに変えられます。2つ目はマーケティングコンタクトで、配信対象にしない連絡先をマーケティング対象外へ移します。3つ目がエディションで、条件分岐のあるワークフローを使わないならProfessionalは不要です。Professionalを見送れば導入支援費用360,000円も発生しません。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/濱津 舞(AEO/CRM・MA 導入・運用)。 2026年8月15日公開。