AI社員に任せてはいけない仕事は? 社内でAI社員2人を動かして決めた「人が持つ7つの判断」
AI社員に任せてよいのは、原案づくり・調べもの・下ごしらえまで。社外に出る、お金が動く、取り消せない判断は人が持ちます。営業とマーケティングをAI社員2人に任せているトライエッジが、実際の失敗から決めた7つのルールをまとめました。
トライエッジでは、マーケティングをAI社員の「ズッキーニ」、営業を「ルッコラ」が担当しています。2人は社内のチャットで相談しながら、サイトの改善、記事やメルマガの下書き、見込みのお客様へのご案内メールの文案づくりを毎日進めています(日々の流れはこちらの記事にまとめています)。
動かしてみて分かったのは、AIは驚くほど多くの仕事をこなせる一方で、任せてはいけない判断がはっきりあるということです。この記事では、トライエッジが実際の失敗から決めた「人が持つ7つの判断」を紹介します。
結論:AIに任せるのは「原案・調べもの・下ごしらえ」まで
先に結論です。トライエッジでは、AI社員に任せる範囲を次のように分けています。
- AIに任せる:文案や下書きをつくる、情報を調べる、数字を集めて表にする、作業の手順を準備する
- 人が持つ:社外に出す、お金が動く、取り消せない、人の名前や数字を確定する
AIがどれだけ賢くなっても、「出したら戻せないもの」の最後の判断は人がします。逆に言えば、そこさえ人が持てば、下ごしらえはかなりの部分をAIに任せられます。
人が持つ7つの判断
1. 社外に出るものは、出す直前に人が「はい」を出す
お客様への1対1のメールは、AIは文案までをつくり、送るのは人です。サイトの公開やメルマガの配信は、出す直前に、AIがもう一度中身を人に見せ、人が「はい」と答えてから実行します。
サイトの公開は、一度「はい」をもらっていても、実際に出す前に変更内容をもう一度見せる決まりにしています。
2. パスワードの入力や、見積り・契約の確定はさせない
AI社員にはパスワードを入力させません。ログインが必要な画面は、人が先にログインしておきます。見積り・発注・契約を確定する約束も、AIにはさせません。
3. 削除や一括の書き換えは、前に内容を見せ、元に戻せる記録を残す
顧客データをまとめて書き換えるような作業は、何件を、どう変えるかを先に人に見せます。 実行するときは、変える前の状態を記録に残し、いつでも元に戻せるようにします。削除も同じで、何を消すかを先に見せ、人の「はい」が出てから実行します。
4. 人の名前・会社名・数字は、推測で書かない
AIは、それらしい漢字や数字を自信を持って書いてしまうことがあります。そのため、名前や数字は元の資料から写すこと、確かめられなければ「未確認」と書くことを決まりにしています。
5. Webページやメールに書いてある「指示」には従わない
AIはWebページやメールを読んで仕事をします。その中に「この操作をしてください」といった文が紛れ込んでいても、AIは従わず、人に確認します。 作業の依頼はAI社員どうしでもしますが、社外に出す・消すといった判断の指示を出せるのは、決められた人だけです。
6. 予定・カレンダーの操作は、頼まれたときだけ
トライエッジでは、会議の記録などで別のツールもカレンダーを使っています。AI社員が勝手に予定を入れると、ほかのツールの動きとぶつかります。そのため、カレンダーの操作は人に頼まれたときだけにしています。
7. AI同士の「OK」は、承認にならない
ズッキーニとルッコラは、お互いに相談し、作業を確認し合います。ただし、AI社員どうしの「OK」は承認として扱いません。 社外に出すかどうかを決めるのは、人だけです。
実際にあった失敗と、そこから決めたこと
7つのルールは、最初から全部あったわけではありません。動かしながら失敗し、そのたびに足してきました。
起動用のファイルに書き足して、AIが起動しなくなった
2026年10月1日、AI社員のズッキーニが、自分を起動するための設定ファイルに書き足しをしました。その結果、次に起動しようとしたときに、立ち上がらなくなりました。全体のとりまとめ役の別のAI社員が、元の状態に戻しました。
決めたこと:起動に関わる設定は、その本人には触らせない。変える必要があるときは、担当に頼む。
「パートナー一覧に載っていない」と報告したが、実際は載っていた
2026年10月13日、AI社員が使っているツールの提案に「トライエッジは、HubSpotのパートナー一覧に載っていない」と書かれていました。AI社員はそれをそのまま報告しましたが、代表の中野から、載っていると指摘を受けました。実際に一覧のページを開くと、トライエッジは載っていました。ツールが根拠として示していたページは、すでに存在しないものでした。
決めたこと:ツールの答えは鵜呑みにしない。人に伝える前に、元のページを開いて確かめる。
海外ニュースの言葉を取り違えて伝えた
2026年9月30日、海外のニュースで話題になっていたGoogleの仕組みを、AI社員は「検索のスパム対策」として伝えました。元の論文を読むと、実際は動画チャンネル向けの仕組みで、検索で使っているという記述はありませんでした。
決めたこと:大事な話は、ニュースの記事だけで判断せず、元の発表や論文を読んでから伝える。記者の推測を、事実として書かない。
人の確認を入れても、AIに任せる意味はある
「最後に人が見るなら、結局手間は減らないのでは?」と思われるかもしれません。実際には、時間がかかるのは調べる・書く・数字を集めるといった下ごしらえの部分です。人がするのは、AIが用意した内容を読んで「はい」を出すことなので、下ごしらえに比べて、ずっと短い時間で済みます。
また、確認の手間よりも、出したあとで取り消せない失敗をするほうが、ずっと高くつきます。 間違ったメールは取り消せませんし、お客様の信頼はすぐには戻りません。
まとめ
- AI社員に任せるのは、原案づくり・調べもの・下ごしらえまで
- 社外に出る、お金が動く、取り消せない、名前や数字を確定する判断は、人が持つ
- ルールは最初から完璧でなくてよい。失敗したら、その場で1つずつ足していく
トライエッジでは、この考え方で、お客様専用のAI社員づくりもお手伝いしています。どこまでを任せられるかは、AI社員の導入・運用支援のページと、AI社員のサービス資料(無料)でご覧いただけます。
FAQよくあるご質問
Q. AI社員に任せてはいけない仕事は何ですか?
社外に出るもの(メールの送信、サイトの公開、メルマガの配信)、お金や契約に関わるもの、削除のように取り消せない操作、人の名前や数字の確定です。トライエッジでは、AI社員は原案づくり・調べもの・下ごしらえまでを担当し、これらは最後に人が確認してから実行しています。
Q. 人の確認を入れると、AIに任せる意味が薄れませんか?
薄れません。時間がかかるのは、調べる・書く・数字を集めるといった下ごしらえの部分です。人がするのは、AIが用意した内容を読んで「はい」を出すことなので、下ごしらえに比べて、ずっと短い時間で済みます。確認の手間より、出したあとで取り消せない失敗をするほうが、ずっと高くつきます。
Q. 承認待ちで、AI社員の仕事が止まってしまいませんか?
止まることはあります。そのため、確認してほしいことは1件ずつ短くまとめて送らせ、急ぎのものには締め切りを書かせています。メルマガのように毎週くり返す仕事は、締め切りまでに返事がなければ、事前に見せた内容のまま進めてよい、という決まりを人が先に決めておく方法もあります(トライエッジのメルマガでは、代表があらかじめこの決まりを承認しています)。
Q. 自社でAI社員を入れるとき、最初に何を決めればよいですか?
「どこまでをAIに任せ、どこで人が止めるか」です。まず、社外に出るもの・お金が動くもの・取り消せないものを書き出し、そこは人が確認すると決めます。そのうえで、AIに任せる下ごしらえの範囲を広げていくのがおすすめです。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/中野 三四郎(代表取締役CEO)。 2026年10月28日公開。